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やめよう、一気飲み

 新入生歓迎会や学生コンパのシーズンになると“一気飲み”とか“かけつけ三杯”という大変馬鹿げたお酒の飲み方がよく見られます。適当なアルコールは血の巡りを良くし、胃液の分泌をよくし食欲増進することからストレス解消や全身の緊張をやわらげたりするのが食前酒として役立ちます。しかし、適量を超えたり飲み方を誤ったり、アルコール依存症になったりすると百薬の長も肝臓、心臓、脳にとりかえしのつかない百害をもたらすことになるのです。

 アルコールは、胃粘膜からは少しは吸収されますが、ほとんど十二指腸から空腸にかけて、飲んだアルコール量に応じて、血液中に拡散してとりこまれていきます。その吸収される度合いは、胃から小腸へ流れ込む量、アルコールの濃度、消化管の中の食物の有無、腸管粘膜の血行状態で大きく変化します。特にシャンパン、ビールなどの発泡性の酒類は、泡として発生する炭酸ガスの刺激によって腸管の運動を亢進させ、腸管粘膜の血流の増加を起こすため、アルコールの吸収を早めます。

 急速なアルコール血中濃度の上昇は、エタノールそのものによる中枢神経系の興奮または抑え込み作用を起こし、個人差はあっても血中アルコール濃度に平行して進行していきます。ほろ酔いから陶酔へ、そして泥酔へと急性アルコール中毒への最短距離をつっぱしるのが“一気飲み”という悪い風習なのです。

 空腹時に酒一合を飲むと30分ぐらいで血中アルコール濃度は最高となり、2合飲めば血中濃度も約2倍になることが知られています。一般に人は体重1kg当たり1時間で0.1?0.15gのアルコール処理能力を持っているので、日本酒一合を処理するのに体重60kgの人で2?3時間かかるということになります。ゆっくり飲めば、同時に代謝処理過程も進行するので、最高血中濃度も比較的低位のまま経過して、酔いの程度もほどほどに時間と共に低下して行きます。

 特にアルコールの第一代謝生産物であるアセトアルデヒド脱水酵素が先天的に欠損している人の多い日本人では、自律神経を刺激しカテコールアミンの分泌を上昇させ、頭痛、吐き気、嘔吐、めまい、動悸、末梢血管拡張、血圧低下、錯乱、痙攣、昏睡そして多少の個人差はあっても血中濃度が0.3%以上になると呼吸抑制によって死すら招くこともあるのです。

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