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起立性調節障害

 皆さんは立ち眩みや午前中のテストでエンジンがかからなくて実力が出せなかった記憶とか、あるいは朝礼でパタッと倒れた女子中学生とかをご覧になられた事はありますか?そういったケースは、俗に脳貧血、正しくは起立性低血圧とか起立性調節障害、略してOD(オーディ)と呼ばれるものである事が多いのです。

 血圧とは読んで字の如く、心臓から送り出される血液の圧力を意味します。そして水道のホースで水を撒く時、先端を押し潰すと圧力が上がって遠くまで飛ぶ様に、血管の壁も収縮して圧力を上げ、血圧が調節されています。ODとは、この血管が収縮して圧力を高める機構の不完全な状態が原因です。例えば成長期にある子供が年に4cmを越す身長の伸びを示し、末梢の動脈を絞めるための神経の分布がまばらとなっている場合とか、元々自律神経系がちゃんと機能していない様な場合、急に起き上がったりして重力による血液循環状態に変化が生じた時に、本来ならばそれに対抗して上がるべき血圧が維持できず、一時的な脳の血液供給の不全を生じる事などが本態だと考えられています。従って心拍出力を作る心臓のポンプ機能が低下している心不全や、体内を循環する血液量の減少した失血状態とか、血液が薄くなる貧血等の疾患とは全く別のものです。

 現在ODには診断基準が定められており、(1)立ち眩み、或いはめまいを起こし易い(2)立っていると気持ちが悪くなる、ひどくなると倒れる(3)入浴時或いは嫌な事を見聞きすると気持ちが悪くなる(4)少し動くと動悸或いは息切れがする(5)朝なかなか起きられず午前中調子が悪い、の5つの大症状と、その他乗り物酔いなどの症状や検査等10項目からなる小症状うち、大3つ以上又は大2つと小1つ以上、もしくは大1つと小3つ以上の症状を示し、他の疾患が否定された場合とされています。

 治療としては、何もしないで成長期を終えるまで静観するほか、内服や自律神経訓練法が行われます。朝が弱い方、朝だけ学校に行きたくないために不登校に間違えられそうな方などは、一度小児科や循環器内科を受診されると良いでしょう。