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急性アルコール中毒のはなし

 若者の間で流行したイッキ飲みで死亡する事故がありましたが、これなど典型的な急性アルコール中毒といえます。短時間に多量のアルコールを飲んで、体がアルコールの作用によってメロメロになってしまうのが急性中毒です。酔い加減は血中のアルコール濃度によって決まります。

 血中濃度が0.05‐0.15%ではいわゆるほろ酔い期といわれ、気分爽1失で活発に喋り、やがて大声でがなりたてる状態です。さらに0.16‐0.30%に達すると息づかいも荒く、千鳥足でよろめき、吐気や嘔吐をもよおす酩酊期に入っていきます。まともに立てなくなり意識もうろう支離滅裂な言葉を発するようになると、血中濃度は0.31‐0.4%となり泥酔状態となってやがて昏睡から死へと最悪の事態を引きおこすことになってしまいます。

 致死量の血中のアルコール濃度は0.4‐0.5%といわれていますが、大酒飲みの場合1.5%でも平然としていたという報告もあります。赤チョウチンの居酒屋から千鳥足の酔っぱらいがさまよっているといったダラシナイ風景は、アル中のうようよしているニューヨークのソーホー地区でさえめったに見られません。それはアルコールの飲み方や体の中でのアルコールの分解の仕方が人によってさまざまであることによるものなのです。東洋人の40‐50%は、民族遺伝的にアルコールからアセトアルデヒドになり、さらにアセテートに変化させる脱水素酵素が欠損しています。

 この酵素をもっている人に比べると短時間のうちに10‐20倍の血中濃度に到達してしまいます。いっ気飲みとか返盃といった日本人の酒の飲み方は、急性アルコール中毒といったおそろしい事態をひき起こす引きがねになることを忘れてはなりません。酒はゆったりとたしなむもの、それで初めて百薬の長にもなるのです。