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糖尿病患者と飲酒

 お酒は昔から百薬の長と言われたり、逆に気違い水などとも言われています。この様に相反する異名があるのは何故でしょうか。

 糖尿病でない成人男子では、毎日適量以内の飲酒は健康増進によいと言われています。けれども、糖尿病のあるひとにはお酒は原則として好ましくない飲料です。すなわち、アルコールは糖尿病の食事療法などや合併症の予防上いろいろな面で悪影響があるので、できるだけ禁酒することが望ましいのです。しかし、付き合い上必要なこともでてくるでしょう。体の状態や血糖値が長期にわたって良好に保たれていれば、主治医は一定の範囲で許可をだすことがあります。

 お酒にもエネルギーはありますが、糖質、蛋白、脂肪などの栄養素とは全く異なるもので、栄養源とはなりません。アルコールは体内でどのくらいエネルギーとして利用されるかは、体の状態などその時によって変化しますので一概に言えません。血糖を上げるだけでなく、肝臓の中性脂肪(トリグリセライド)を増やす働きがあります。アルコールだけを大量に飲むと低血糖を起こすことがあります。ことに、インスリン注射や血糖降下剤などの飲み薬を用いている人では低血糖を起こしやすく、そのような状態を酔っ払いと見誤られたりすることがあり、大変危険です。またアルコールには、食欲増進作用がある上、アルコールで気が大きくなってつい食べ過ぎ、飲み過ぎになるので、厳重に注意すべきです。

 では、どのような人ならアルコールを飲んでもよいのでしょうか。最終的には主治医の判断ですが、次の四条件を満たす場合です。すなわち(1)血糖のコントロールが良好で長期に安定し、糖尿病の合併症がないか、あっても軽症で進行していないこと。(2)膵臓や肝臓の病気がないこと。(3)高血圧や動脈硬化症がないか、或いは軽いこと。(4)アルコールを飲みはじめても、必ず決められた量で止めることができること。さて、あなたはどうでしょうか。