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肺がんのはなし

 現在では、肺がんの死亡率が胃がんを抜いて、日本人の全死亡率のトップになりました。がんはエイズのような伝染病ではありませんが、治すことの困難な病気です。肺がんについても様々な治療が工夫されましたが、その治癒率は一割にも及びません。呼吸器の病気ですからタバコや大気汚染が話題になります。一方がんになりやすい体質の存在もあるとされ、環境だけでないようですが、よくないものを遠ざけるのが今のところ唯一の予防対策でしょう。

 肺がんには、いくつかの種類があり男性に多い偏平上皮がんは肺門部といって肺の入口の近くに多く発生するので、咳、痰など、呼吸器の症状が出ます。この呼吸器症状によってがんが発見され、早期に手術を受ければ命が助かります。がんが悪性腫瘍といわれるのは、ほかの臓器に転移し、それによって命が奪われるからですが、偏平上皮がんは、それがもともとほかのがんに比べて少ない事と、呼吸器症状があるので早期に気がつく事で、ほかの肺がんよりも治癒率が高いのです。

 女性に多いのは腺がんです。末梢部に発生します。肺門部より遠い肺の部分です。早期には呼吸器症状が現れないので、見つかり難く、がん性胸膜炎が発生してはじめて発見されるなど、治療の時期を逸してしまい、日頃、検診さえしていればよかったのにと思うケースもあります。

 小細胞がんは、気管支中枢部に発生する極めて悪性度の高いがんです。その激しさから、ほかの全ての肺がんがひとくくりにされて「非小細胞がん」と呼ばれているほどです。肺門リンパ腺が腫れているのをレントゲンで見つけて、よくよく見ると近くの肺に妙な淡い影がありそれが原発巣、小細胞がんの本体であった、というような事もよくあります。大細胞がんは濃い目立つ影として発見されます。頻度は少ないが悪性です。

 肺がんの治療は、まず手術で病巣を摘出することです。つぎにがんの化学療法と、放射線療法です。ほかに免疫療法もあります。近頃は、いろいろな治療を組み合わせて一発勝負に出る多角的集学的治療に期待が集まっています。難治の疾患ですから学問的根拠があればやるべきでしょう。