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甲状腺の病気

甲状腺のある場所、形、働き

 甲状腺は首の全面、いわゆる“のどぼとけ”の下あたりにあり、蝶々の形をしています。正常の人では外から見ても、触ってもわかりません。人間の成長や代謝に重要な2種類のホルモン(T3、T4)を放出する内分泌官です。甲状腺は勝手にホルモンを出すのではなく、司令塔である脳下垂体(脳の真ん中にあります)にコントロールされて活動しています。

 

甲状腺の病気の種類

 ある甲状腺の専門病院に初めてかかった患者さんの病気の種類を示します。

  第1位  バセドー病

  第2位  結節性甲状腺腫

  第3位  橋本病

 この3つの病気で85%を占めています。残り15%の半分は甲状腺がんでした。

バセドー病

 第1位のバセドー病は、一種の炎症により甲状腺が大きくはれ、ホルモンが過剰に分泌されます。そのため甲状腺機能こう進症、あるいは甲状腺中毒症とも呼ばれます。過剰なホルモンにより食欲は旺盛になりますが、代謝が促進されて食べても食べてもどんどんヤセてしまいます。また脈が多くなり動悸を訴えます。汗をかきやすく、イライラし、動きは活発です。特徴的なのは、かなり初期より目が突出することが多いことです(バセドー眼症)。さらにひどくなると、血糖が高くなり、手がふるえ、下痢・発熱・頻脈や不整脈(心房細動という不整脈が多い)による心不全も生じ、やがて意識がおかしくなり大変危険な状態におちいります(甲状腺クリーゼ)。この病気は女性に多く、また同じ家族に現れることも特徴です。

 治療は (1)くすり (2)放射線治療 (3)手術と3通りありますが、通常はくすりでよくなります。完全になおってくすりがいらなくなる人、よくなるけれど長期にくすりが必要になる人がいますが、事前の予測は困難です。ただし、軽いうちに治療を開始すれば少ないくすりでよくなることが期待されます。

結節性甲状腺腫

 甲状腺にしこりができている場合をさします。このような場合はかならず専門施設で針をさしてその原因(細胞)を調べますが、甲状腺がんがまれに見つかります。このがんを除いたものを結節性甲状腺腫と呼びます。多くは定期的な診察ですみますが、大きなものは手術が必要になることがあります。

橋本病

 圧倒的に女性に多い病気です。慢性の炎症が原因ですが、こちらは通常甲状腺は硬くなり、バセドー病ほどは大きくなりません。慢性甲状腺炎・甲状腺機能低下症ともいわれます。2種類のホルモンとも出涸らし状態となり、ホルモンの欠乏により、バセドー病とは全く逆の症状が徐々に出てきます。寒がり、便秘、体重増加、無気力、毛が抜ける、肌がカサカサする、足がむくむ、声が低くなるなどです。全身のむくみがひどくなり、体温も低下し、意識もおかしくなり、粘液水腫性昏睡と呼ばれる状態になると命が危なくなります。治療は不足したホルモンを補充すれるだけですが、残念ながら一生飲み続けなければなりません。

 

その他の甲状腺の病気

 亜急性甲状腺炎、急性化膿性甲状腺炎といわれる炎症性の病気がたまにあります。炎症ですので、はれたり、熱が出たり、痛かったりします。

 また甲状腺にも“がん”があります。たちの良いがんとたちの悪いがんまでいろいろです。甲状腺のしこりで気づかれる場合がほとんどです。また悪性リンパ腫という血液のがんも起こります。

 

甲状腺の検査

 ホルモンの異常は血液を調べれば簡単にわかります。町のお医者さんでも可能です。しこりの検査は、甲状腺の超音波検査(エコー)やCTスキャンで調べますが、最終的には針でしこりの細胞を調べる穿刺吸引細胞診が必要になります。病院の外科を受診すれば可能です。

 

(最終更新日 2011/2/21)