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母親由来の免疫と子供の伝染病

 そもそも免疫とはどういうことかということから理解した方がよいと思いますが、免疫ということを詳細にお話するとかなり複雑になります。そこで一つの例として次のように理解して下さい。例えばはしかに一度かかると二度とかからないということはよく知られています。これははしかにかかるとはしかの免疫ができるからです。この免疫ができると再びはしかのウイルスに感染してもはしかが発症しないような仕組み、すなわち抗体というものが出来るからです。この抗体は免疫グロブリンといわれるもので、現在5種類ほで発見されています。この中で免疫グロブリンGという名のついたものが胎盤を通過して母親から胎児へ移行します。

 免疫グロブリンGという物質はいろいろなウイルスやばい菌に対する免疫物質なので赤ちゃんはいろいろな伝染病にかかりにくいわけです。胎児の時期は子宮という厳重に防備された中で生活しています。つまり、外界の危険から保護され育っているわけです。しかし、生まれると同時に母親から離れて生きてゆかなければなりません。そこにはいろいろな危険物質があります。ウイルスやばい菌などはその代表といえましょう。そんなとき、ただでさえ弱い赤ちゃんにとって強力な味方になるのがこの母親由来の免疫物質です。

 ただし、この母親由来の免疫グロブリンは生後6か月ころになると赤ちゃんのからだからだんだんと消えてゆきます。ですから、赤ちゃんが生まれて6か月を過ぎるとはしかを始めとしていろいろな伝染病にかかりやすくなるというわけです。

 なお、母親由来の免疫物質にはもう一つ重要なものがあります。それは免疫グロブリンAという名前のものです。これはどこにあるかと言いますと、母乳の中にたくさん含まれています。この免疫グロブリンAという物質はいろいろな病原体が増えるのを押さえる働きがある同時にウイルスやばい菌に対する抗体が含まれています。従って母乳で育てられた赤ちゃんにはいろいろな伝染病かかりずらいということになります。このような意味からも赤ちゃんを母乳で育てるということはとても大切なことといえます。

 このように生まれてから6か月くらいするといろいろな伝染病にかかる可能性があります。ですから子どもは早い時期から伝染病に対する抵抗力をつけておく必要があります。それがワクチンです。実施できる時期がきたらなるべく早くワクチンの接種を受けるよう心がけましょう。