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子どもと抗生物質

 まず、抗生物質とはどういうものでしょうか。これはある種の微生物から作られるもので、これが他の微生物の働らきを無くしたり、壊したりして死滅させる作用を持ったものです。少しわかりづらいのでもう少し説明しましょう。例えば、子どもがバイ菌に感染して咽頭炎や扁桃炎になったとき、抗生物質を服用します。その時、抗生物質はバイ菌の機能を阻止したり破壊し、結果として子どもの病気が治るという訳です。

 人類の歴史がはじまって以来、ヒトは多くの病気に悩まされてきました。中でもバイ菌の感染によって引き起こされる沢山の病気があったわけですが、この抗生物質が発見されて以来、バイ菌の感染によって命を落とすというこが激減しました。現在でも多くの病気やその余病が抗生物質のお陰で治されています。

 抗生物質が発見されてから約80年になります。この間に多くの命が救われてきたわけですが、抗生物質の威力が素晴らしいものであるために、莫大な量の抗生物質が使われてきました。無論、今でも世界中で沢山の抗生物質が使用されていますが、わが国での使用量は時に多いといわれています。

 中でも、子どもは咽頭炎、扁桃炎、気管支炎、肺炎、中耳炎、ちくのう(副鼻腔炎)、とびひ(伝染性膿痂疹)などの多くの病気にかかりやすく、結果として抗生物質を服用する機会が多くなります。これらの病気を治すには抗生物質の力を借りて早く治さねばなりません。必然的に抗生物質を服用する機会と量が多くなります。

 一方、バイ菌の側からすると抗生物質で殺される前に何とか生き延びようと工夫します。その結果として抗生物質の効かないバイ菌も出てきました。これを耐性菌(たいせいきん)といいます。

 耐性菌として最初に問題になったのがMRSA(エムアールエスエー)、つまりメチシリン耐性黄色ブドウ球菌といわれるものです。この菌は殆どの抗生物質が効きませんが、唯一バンコマイシンという薬が効きました。しかし、最近では更に、このバンコマイシンにさえ効かない菌も出てきてしまいました。

 この耐性菌の発生はいろいろな原因で起こるものと思われますが、何といっても大量の抗生物質の使用がこのような結果をもたらしたといえましょう。このように考えると必要以上の抗生物質は使用しないように、医師も患者も考えることが大切です。