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寒さと脳卒中

 脳卒中は血管がやぶれて脳出血やくも膜下出血を起こす場合と、脳梗塞や脳塞栓のように血管がつまって起こる場合に大別できます。血管がつまってしまう脳梗塞は、脳内の血管の壁が段々と厚くなって血管の内腔を狭めそこへ血栓が出来たり、心臓の方から送られてきた栓子がつまってしまうことで引き起されます。脳内血管は内・中・外膜の三層構造からできています。このうちの中膜にコレステロールや中性脂肪が溜まって血管の壁が硬く弱りついには内膜もボロボロになって血管の壁自体を厚くします。次から次へと送られてくる血液によって、そこへ血栓がひっかかり、雪だるま式に血管内腔を狭くする現象が引き起されます。これを脳の血管の粥状硬化と呼んでいます。

 現在は磁力線を使ったMRIで脳実質の脳梗塞を起こした場所をつきとめることが出来ます。又、MRAではかなりな細い血管まで塞がったり、膨らんだりする様子を診断できるようになりました。未破裂の脳動脈瘤や神径学的症状を起こしていない初期の脳梗塞(いわゆる無症候性脳梗塞)も比較的容易に発見できます。脳血流エコーやPETなどでつまった血管の支配領域の状態も診断できます。

 脳梗塞が脳の中の大きな3本の主幹動脈に及ぶと、多くの場合運動麻痺や失語など、その起こった分野に応じて多彩な病状を引き起します。治療の方法は血管内血栓除去や閉塞部位のバイパス手術の他に、脳の代謝改善剤や血流増強剤の使用があります。しかし、薬物療法はその効果を完璧に期待できるところまで進歩していません。最近話題となっているアルツハイマー治療薬の評価は未だ未確定というしかありません。

 一方脳出血は脳の血管には左右に3本ずつ太い動脈があって、それから分かれた細い血管が血流に逆らうようになる部分があって、この細い血管が破れると、脳出血になることからシャルコーの脳出血動脈といわれます。特定の動脈がやぶれるので、、片麻癖とか失語症など後遺症はほぼ同じような型になります。この他に脳の表面に近いところに出血する皮質下型、深い所に破ける視床型、小脳・脳幹に出血する型と四つのパターンがありますが、出血の場所、出血量を正しく素早く診断することで予後が大きく変ってきます。現在では血腫を手術で除去して、脳循環を改善することもできます。

 なんと言っても、予防に勝る治療法はありません。寒い時期に注意するポイントを挙げてみましょう。

  1. 急激な気温変化に注意すること。寒い夜の外出は適当な防寒衣をつけましょう。
  2. 入浴はややぬるめのお湯にゆったり入ること。酒気を帯びて熱い風呂にとびこむことはいけません。できれば脱衣所も暖かくした方がよいでしょう。
  3. トイレは温風器を置いた方がよいでしょう。夜中にトイレに起きる時は一枚羽織るようにしましょう。また、和式より洋式の方が良いといえます。
  4. 寒い日の運動は、やや気温が上がった時間帯を選び、自分の体力に合わせて無理をしないようにしましょう。高血圧、心臓病、糖尿病などの持病のある人は脳卒中のリスクファクターを検査で調べ、かかりつけの医師に適宜アドバイスを受けることをおすすめします。