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脳の血管内手術

 新しい機器を導入することによって驚く程の発展進歩した分野に脳神経外科があります。CT、MRI、MRA、PETといった新しい診断法は、立体的により精密に脳の構造や血管を描き出してくれます。

 それに伴って患者に優しい治療法も考慮されて普及される傾向にあります。特にカテーテルを利用して血管内から病巣に到達し、色々な治療操作をする血管内治療は、循環器科、血管外科、消化器科など多くの分野で発展しつつあります。脳血管内手術はこれら全ての技術を集約すると共にコイルや塞栓物質の新しい研究によって、手術成績の向上が得られるようになりました。

 脳血管内手術の利点は、開頭せずに血管の中から脳の疾患を治療するところにあります。破裂すればくも膜下出血を起し、死亡率の高かった脳動脈瘤は、従来全身麻酔下で顕微鏡を使って熟達した脳外科医による動脈瘤クリッピングが行われていました。

 しかし1991年UCLAでプラチナ合金を、血管経由で動脈瘤の内腔をうめてしまうコイル塞栓術の第1例に成功して以来、局所麻酔で短時間で瘤(りゅう)を処理する方法は急速に普及すようになっています。特に脳ドックによって早期診断できるようになった未破裂動脈瘤への応用は数日の入院で十分で、2000年半ばで欧米で1万5千例、日本でも1万3千例が報告されています。また脳梗塞を起す動脈硬化性疾患についても、血管を内から拡張させたり、血管内にトンネル管をおいたりするステント血管形成術も脚光を浴びるようになりました。この他脳腫瘍の栄養血管をつめて、腫瘍を摘出する時の出血量を少なくする工夫にも応用されています。

 しかし、忘れてならないことは、脳の血管内の操作であることから、例えば動脈瘤が術中破裂を起こしたり、コイルがはずれて血管を閉塞する危険を常に予測して、それに対応できる、熟練した開頭術の経験豊かな脳神経外科医の立ち合いが不可欠な点です。麻酔医、神経放射線医そして開頭術を多数経験した脳外科医の協同作業によって大きな発展進歩が期待される分野です。