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スギ花粉症

 寒さが弛む2月初め頃から、継続的に鼻がむずむずし、くしゃみがでて鼻水が止まらなかったり、目が痒かったり、ノドがいがいがして、咳の出る症状が現れたならばこれはカゼではなく、スギ花粉症が考えられます。

 この時期に鼻水を採って顕微鏡で見ると、好酸球という細胞が見つかれば、スギ花粉症を疑います。次に、皮内反応を行ってスギの抗原液で発赤が現れたならば間違いないでしょう。さらに血液中のスギ抗体が陽性に出れば確定です。スギ花粉の飛散は2月初め頃から4月中旬ごろまでですが、スギ花粉症の方の7割はヒノキ花粉にも反応してしまうため、6月まで症状が続くこともあります。非常に過敏な人は12月や1月から発症する場合もあります。

 杉の木は戦後日本全土に植えられて、まだ成育の途上にあるものが多いため、飛ぶ花粉の量も増えています。更に大気汚染のために目、鼻、ノドや気管の粘膜は弱くなっており、スギ花粉症の患者数は年々増加しています。

 治療法は、現在は抗ヒスタミン剤をはじめとする抗アレルギー剤の内服や鼻の局所に使用し、副作用の極めて少ないステロイドの噴霧剤が中心となっています ( アレルギー性鼻炎 の項を参照)。

 スギ花粉症の根本的治療法は唯一、減感作療法であるとされています。これはスギの抗原を比較的大量に皮下に注射することを繰り返して、体を順応させるものですが、この治療法は長期に頻回に通院が必要で、また重篤な全身性副作用であるアナフィラキシーショックを伴うことがあるため広くは普及しておりません。近年、注射を行わずスギ抗原を舌下に投与する舌下減感作療法の研究が進んでいます。効果は従来の減感作療法とほぼ同等で、アナフィラキシーショックがないとされており、欧米ではすでに臨床で使われています。

 花粉症を予防するには、外出時にはツバつきの帽子をかぶり、スカーフなどを着用しゴーグルやマスクを使用しましょう。帰宅時には、外で衣服や髪の毛についている花粉をはらい落としてから家に入り、よく洗眼・洗髪・うがいをしましょう。ふとんや洗濯物を干した後は、しっかり花粉をはらい落としてから取り込みましょう。家のリビングルームや寝室にはエアクリーナーを置くのも効果的です。

 また、スギ花粉飛散開始日よりも2~3週間前から抗アレルギー剤を内服し始める「初期療法」も推奨されます。この方法により、症状が起こってから治療を開始するのに比べ、花粉症シーズンを通して症状が軽くすむようになります。

 

(最終更新日 2011/2/21)