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耳あか

 耳の穴から鼓膜に至るまでの外耳道にはむく毛が生えていて、そこには汗腺や皮脂腺があり、そこからの分泌物が異物の侵入に対して防衛的な作用をしています。その分泌量はごく少ないため、乾いてぼろぼろになった白色の耳あかとなりますが、顎の関節の動きによって自然に耳の外に排出されてしまいます。時には黄褐色(おうかっしょく)の水飴のようにねばりけのあるものもあったり、外耳道炎にかかっていると分泌物が増えてそれが固まって外耳道を塞ぐことがあります。これを耳垢栓塞(じこうそくせん)と呼んでいます。

 外耳道は大人では約3cmで曲がっているため、耳たぶを後ろ上の方に引っ張り上げることによって鼓膜を見ることができます。子どもでは外耳道の長さは短く、弯曲も軽いことが多いため、時には耳たぶに触れることなく鼓膜を直に見ることができます。

 ひどい耳垢栓塞のときはまれに耳が聞こえなくなることもありますが、これはさほど多くはありません。耳あかがあると聞こえなくなるのではと心配してよく耳かきでとろうとしますが、それよりもその弊害のほうがはるかに大きいのです。それは鼓膜に近い外耳道の半分は、骨の上にある血管や神経を薄い皮膚が覆っているだけなので、そこを擦ることによって鋭い痛みと出血をみることがあります。さらに、手元が狂うと鼓膜を破ってしまいます。時には鼓膜に付いている耳小骨をこわして、難聴になることもあります。これは耳小骨の再建手術を受けないと元には戻りません。このようなリスクを持っている耳掃除はなんの益もありません。耳鼻科の医師は子どもの耳あかをとるときには、助手が頭を固定して、医師は外耳道に十分な光を入れて、拡大鏡や顕微鏡を使用して、耳用のピンセットか鉗子を用いて細心の注意をはらって耳あかをとるのです。

 ですから耳の掃除は一年に一回、特に水泳の始まる前に耳鼻科で行ってください。乳幼児では年2回は必要でしょう。

 

(最終更新日:2010/3/26)