保険医の生活と権利を守り、国民医療の
向上をめざす

健康ファイルボックス

病気や健康に関する知識をお届けします

TOP > 健康ファイルボックス > 耳鼻咽頭科 > 嗅覚の異常

嗅覚の異常

 嗅覚は文明の進化とは逆に次第に退化してゆく感覚のように考えられています。しかし臭いの感覚が弱くなったり臭わなくなると、ガス漏れや火事に気がつくのが遅れたり、食べ物が腐っていることに気が付かないで大事にいたる場合もあります。

 またこの感覚の異常は味覚にも影響するため、食べ物の風味が分からなくなって、お料理を上手に作れなかったり、美味しく食べられなくなってしまいます。

 また花や香水の香りを楽しむことができなくなって、日常生活に潤いがなくなってしまいます。臭いを感じる神経は、ちょうど目と目の間の天井の部分にあります。

 嗅覚の異常でもっとも多い原因は風邪をひくと、鼻の粘膜が腫れてしまい、臭いを含んだ空気が臭いの神経まで届かなくなる急性の鼻炎です。

 この炎症は大抵一過性の場合が多いので、炎症の治療で臭いは戻ります。

 ところが慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎では、臭いの粘膜や神経が障害されるうえ慢性化しているため、その治療はさらに困難となります。頭部の外傷、脳の腫瘍や出血によって臭いの神経が障害された場合には、今のところ残念ながら有効な治療法はありません。鼻の病気で起きた嗅覚の異常に対しては、ステロイドの局所治療があります。ステロイドの点鼻薬を朝と夜の2回、あおむけに寝た状態で両方の鼻の穴に少量たらします。これで鼻粘膜の炎症は改善されます。まず2ヶ月は点鼻をつづけて臭いが戻るかどうかをみます。

 普通神経は一度死んだら再生しないと言われていますが、嗅覚の神経については2ヶ月ほどで回復する場合があるからです。

 次に大切なことは嗅覚が持続することが確かめられたら、1日2回を1日1回、2日に1回、3日に1回と次第に間隔を離していくことです。ステロイド剤は副作用が心配になりますが、その量は極めて微量ですから、まず局所治療では副作用の心配はほとんどありません。安心して使用して下さい。