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視神経乳頭陥凹(ししんけいにゅうとうかんおう)
近年、健診や人間ドックの眼底検査で「視神経乳頭陥凹の疑い」という判定を受けて眼科を受診する方が増えています。しかし、判定結果の用紙を受け取るだけで、「視神経乳頭陥凹」が何なのかを説明されている方はほとんどおられないようです。
ここでは、眼底検査と視神経乳頭陥凹について解説しましょう。
眼底とは眼球の内側の部分の総称です。眼底検査では主に網膜とその外側にある脈絡膜、さらに視神経乳頭、硝子体を観察します。
眼球の最内面にある網膜には光を感じる細胞(視細胞)があり、これが障害を受けると感度≒視力が低下します。網膜の中心部は黄斑と呼ばれ、この部分が一番感度のよい場所で、視力と大きな関係のある部分です。視細胞からは神経線維が出て光の刺激を脳に伝えています。この神経線維が集まって束になったものが視神経で、眼球内から集まり脳へ出ていく部分が視神経乳頭と呼ばれます。
脈絡膜は網膜の外側にある膜ですが、網膜が半透明なので眼底検査で観ることができます。
硝子体は眼球内を満たしている構造物で本来は透明です。
眼底検査では、これらの部分の異常の有無を観ているのです。眼底は人体で唯一血管が観察できる場所であるため、健診や人間ドック等でも動脈硬化の程度を観る目的で写真を撮影して判定しています。写真1は眼底の中心部分ですが、通常一枚の写真に写るのはこの範囲くらいで、健診のレベルでは眼底全体を観ているわけではありません。したがって、健診の眼底写真で「異常なし」と判定されても、すべての眼底の病気が否定されたことにはなりません。
視神経乳頭陥凹は文字通り視神経乳頭が凹んでいる状態で、病気でなくても観られるものですが、これが大きくなったり深くなったりした場合には、緑内障を疑うことになります。したがって、異常を疑う場合には「視神経乳頭陥凹拡大」と表記する方が正確と言えます。
緑内障で視神経乳頭陥凹が生じるのは、眼圧が高い、すなわち眼球の内側から外側にかかる圧力が大きいことで視神経線維が圧迫され萎縮するためと考えられています。写真2は、緑内障の診断を受けた方の視神経乳頭です。青い円で囲んだ部分が陥凹になります。視神経乳頭や陥凹の形や大きさには個人差があり、陥凹の拡大だけでは緑内障の診断はできません。日本緑内障学会のガイドラインにも視神経乳頭に関係する診断基準が書かれていますが、視野検査やその他の眼底所見等から総合的に判断することになっています。
最近では、光干渉断層計(OCT)に代表される眼底三次元画像解析装置が普及しており、陥凹の状態を数値化したり色づけした画像で表現できるようになりましたが、その結果だけで診断をするのは困難です。画像の結果と眼底所見や視野検査の結果が合致して初めて診断が確定します。
いずれにしても、健診等で「視神経乳頭陥凹拡大」を疑われたら、眼科の専門医を受診し緑内障かどうかを詳しく調べてもらいましょう。
(最終更新日:2015/3/1)