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前立腺がん

 前立腺は膀胱のすぐ下にあり、膀胱から出た尿は、この中を通る尿道を経て排尿されます。高齢者の主な前立腺疾患には前立腺肥大症と前立腺がんがあります。前立腺肥大症は良性疾患で、前立腺の中の尿道を圧迫して排尿困難を生じたり、膀胱を刺激して頻尿となるなど、早期に症状が発生します。一方、前立腺がんは前立腺の一部にがんが発生するため、最初のうちは症状がなく経過し、がんが大きくなって始めて排尿困難や頻尿が発生します。

 最近前立腺がんは急増しています。欧米では以前から発生率が高いので、一般市民の関心も強く検診を受け早期がんの発見率が非常に高くなっております。一方我が国では、前立腺肥大症を合併し排尿困難を訴えて泌尿器科を訪れ、そこで初めてがんを発見する例が多いようです。

 早期前立腺がんの発見にはどうしても前立腺がんの検診が必要です。前立腺がん検診には三つの検査を行います。まず、第一は医師が肛門から指で前立腺を触れてがんの有無を調べます。次に超音波で前立腺を調べます。第三に採血を行い、前立腺の腫瘍マーカーを調べます。最近の前立腺腫瘍マーカーは非常に正確になり、早期がんも数多く発見されるようになりました。

 この三つの検査中、一つでもがんの疑いがあれば、太い針を前立腺に刺して組織を調べる生検<せいけん>を行います。

 前立腺がんの治療は生検をして採取したがん細胞の悪性度と、各種検査で判定するがんの進行度によって決まります。がんが前立腺に限局し、転移もなく全身状態が良好の場合、前立腺全摘出術と骨盤リンパ節郭清<かくせい>術を行います。その他に放射線治療を行うこともあります。

 前立腺がんは骨に転移しやすいのですが、転移があったからといってすぐ生命に影響するわけではありません。前立腺がんには、ホルモンが大変よく効くので、転移のある例も十年や十五年生存する可能性が十分あります。がんの悪性度によって違いますが、ホルモンが有効なうちは症状もなく、全く正常の生活を送っていられます。ただし、ホルモンに抵抗性をもってくるとがんは進行しはじめ、その後投与する抗がん剤も効かず不幸な結果となります。いずれにしても、がんを早期に発見して早期に治療すれば、完治が可能です。