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過活動膀胱

 トイレが近い(一日に8回以上)、水を触ったりすると急に尿意をもよおす(尿意切迫感)、場合によっては間に合わずもれてしまう(切迫性尿失禁)といった症状は仕事に支障をきたしたり外出や旅行ができなくなるなど日常生活をはなはだ不便にする困った症状で過活動膀胱といわれています。日本での調査によると40歳以上の男女の8人に1人にみられ、その割合は年齢ともに増加し70歳代では3人に一人が患わされ、そのうちの半数で尿もれがあるといわれています。膀胱の尿を貯め、尿を出すという働きは膀胱の排尿筋と尿道の括約筋の協調によって営まれており、この機能を膀胱周囲の交感神経(尿を貯める)、副交感神経(尿を出す)、体性神経(尿道括約筋を閉める)さらには脊髄・大脳皮質といった神経がコントロールしています。

 過活動膀胱の原因はまだわかっていませんが、膀胱の尿を貯め(蓄尿機能)、尿を出す(排出)という働きのうち尿を貯める働きの調節が不安定になった状態と考えられています。同様の症状は膀胱癌、膀胱結石、間質性膀胱炎あるいは前立腺肥大症といった疾患でもみられますし、高齢者では尿を出す働きも同時に悪くなっていることも多いので専門医を受診しこれらの疾患がないかを診断する必要があります。

 受診の際には排尿の記録(時間、尿もれや痛みの有無できれば尿の量)をつけて行くと診断の参考になります。過活動膀胱と診断されれば副交感神経の働きを押さえる抗コリン剤といわれる内服薬が非常に有効です。口内乾燥や便秘といった副作用が生じたり一部の緑内障の患者さんや残尿が多い場合には服用できないこともあります。このような患者さんには交感神経の作用を高めることによって尿を貯めるようにする新しい薬が有効で今後治療薬の選択肢がさらに増えてくるでしょう。

 尿意をもよおしても少し我慢したり(膀胱訓練)、肛門を5秒ほどしめる骨盤底筋体操も効果があります。5~10回を一日に3~4回繰り返して下さい。薬だけに頼るのではなく水分摂取の量や種類を見直したり、唐辛子やアルコールなどの刺激物、柑橘類をひかえることも大切です。いずれにしても正しい診断が必要となりますので、まずは気軽に泌尿器科を受診しましょう。

 

キーワード:頻尿・切迫性尿失禁

 

(最終更新日 2011/2/21)