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たばこと歯周病

  虫歯と並ぶ歯の2大疾患である歯周病は程度の差はあるものの、壮年以降の日本国民の大多数が罹っている病気の一つです。近年では若い年齢層にまで広がり、注目を集めています。この歯周病の悪化と喫煙との確かな関係が解明されています。タバコが肺ガンや食道ガン、心臓病などのいろいろな病気の危険因子であることは良く知られていますが、歯周病や口腔ガンにおいても強い因果関係があります。喫煙の習慣は歯周病にかかりやすく、症状を重くし、進行を早め、治療をしても直りにくくすることがわかりました。

  歯周病は元来、歯周病菌による感染症ですが、調査研究によるとタバコを吸う人と吸わない人との間で歯の周りに住んでいる細菌の種類やすみ分けに、大きな差はなかったとされています。

  すなわち、喫煙は歯周病の原因である細菌に作用するのではなく、歯を支える側の組織である歯肉や歯槽骨を障害し、その治りを悪くする因子となっていると考えられます。タバコの煙にはニコチン、タールをはじめとする有害物質が200種類以上も含まれています。喫煙は有害物質の直接的な作用に加えて、歯周書式血液の流れが悪くなることで酸素や栄養が不足します。歯周組織の抵抗力を弱め、歯周病の原因となる細菌と戦う、からだ全体の免疫力も低下させてしまいます。口の中の環境を整える強い味方である唾液の量や質にもタバコによる悪影響があり、歯周病治療の効果が低下します。 世界の各地域での研究では、歯周病への喫煙者の危険性は非喫煙者に比べて約2~9倍も大きいと報告されています。またある調査により、たとえ口腔衛生状態がよくても喫煙者の方が歯を支えている骨の減少が多く、喫煙者と非喫煙者との差は年齢と共に大きくなることが判っています。喫煙者では歯周病菌による炎症反応が弱まり、歯周病の自覚症状である出血や発赤が少なく、発見が遅れることも特徴です。喫煙の歯周病に対する悪影響は明らかですから、厚生労働省が策定した「健康日本21」の中で、タバコの危険性を扱った内容がやや後退したことは大変残念なことです。

 

(最終更新日:2010/02/12)