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指しゃぶりと歯並び

  幼い子供の無邪気な寝顔は親の心を和ませてくれます。特に眠りにつくときに指しゃぶりをしている姿は特徴的です。乳幼児の指しゃぶりは寝つきの時ばかりではなく、何かの出来事に緊張したり、気分が不安定になったり、逆に疲れたり、ぼんやりしている時に見られる、習慣や癖に近い動作です。誕生前の子宮の中でもしていることがあり、母親のお乳ばかりでなく何でも吸ってしまおうという本能のようなものだとも言われています。

  年齢と共に次第に減少し4~5歳頃までには多くの場合自然におさまる生理的なものですから必要以上に心配することはありません。しかし、学齢期になっても続いたり指や手の一部に傷を作るようなら何かの対策が必要ですので小児科または歯科の先生にご相談ください。

  指しゃぶりの弊害としてはやはり歯並びが悪くなってしまう歯科的な問題が大きいようです。上の前歯と下の前歯が咬み合わなくなる「開口」をはじめとして、上の前歯が外側に傾いて、曲がって生えてしまう症状がよく見られます。それ以外にも上顎の歯列の横幅が狭くなる歯列狭窄や下の顎が後方に押しやられる弊害があり、これに伴って将来的に顎の関節に障害を引き起こす可能性もあります。口周囲の筋肉の発育障害や唇の反転などの障害を起こすこともありますので注意が必要です。

  指しゃぶりを止めさせる方法は数多く考え出されておりますが、大切なことは指しゃぶりをしている本人を責めないことです。もともと寂しさや、不安感を和らげる目的の心理的側面と共に、生理的な側面を持つ癖が指しゃぶりなのですから「いつまで指をしゃっぶってるの、だめでしょ!」などと叱ることは逆効果です。また過去に原因と言われた親の愛情不足という認識は現在は否定されています。将来、歯列矯正が必要になるような歯科的障害が出る可能性はありますが、どちらにしても命を脅かすようなものではありませんから、あまり神経質にならず、子供の発育をやさしく見守ることが良いと思われます。

 

(最終更新日:2010/3/26)