保険医の生活と権利を守り、国民医療の
向上をめざす

健康ファイルボックス

病気や健康に関する知識をお届けします

TOP > 健康ファイルボックス > 歯科 > 歯科医療におけるエックス線の使用

歯科医療におけるエックス線の使用

 2011年3月11日は東日本大震災が発生した日として、永く記憶に残ることとなりました。この地震に伴う津波により起こった原子力発電所の事故は莫大な量の放射線を撒き散らす結果となり、人々の放射線障害に対する危惧と関心が高まっています。ここでは身近な、歯科医療で利用する放射線である「X線」を対象として、日常と医療における放射線被曝線量を考えます。

 原発事故では放射性ヨウ素131と放射性セシウム134、137から生じた放射線が主なもので、X線とは放射線の種類が異なるため、直接に比較をすることは適切とは言えません。放射線被曝の数値は国際放射線防護委員会(ICRP)という専門機関が定めた「人が放射線を浴びて受ける影響」の単位である「Sv:シーベルト」を使用します。人は太古の昔から日常的に環境(宇宙、大地、食物、空気)からの放射線を浴びながら生活をしていて、これを「自然放射線」と呼び、世界平均は年間約2.4mSv(1Sv=1000mSv)です。また、航空機に搭乗して東京とニューヨークを往復した時に受ける放射線量は0.2mSvとされ、これらを比較の例とします。

 歯科の部分的なX線撮影で約0.02mSv(年間自然放射線の約100分の1)、口全体のパノラマ撮影で約0.04mSv(東京-ニューヨーク間の往復航空機搭乗の約5分の1)となり、歯科で使用するX線の放射線量は相対的に大きな量ではないと考えられます。他の医療で受ける放射線量との比較では一般的な胸部X線撮影で0.05mSv、胃のX線撮影で0.6mSv、頭部X線CT撮影で2.0mSv、胸部X線CT撮影で6.9mSvなどが示されています。CT撮影では相応の大きな放射線量を受けることが分かり、歯科医療でも歯科用X線CT撮影装置の普及が進み被曝線量が暫時増加の傾向にあります。得られる情報と被曝線量との関係で慎重な使用が望まれます。

 医療における放射線利用は大きな利益が得られる以上、ある程度のリスクがあることを理解する必要はありますが、最大限の努力で最小限のリスクに留める工夫をする必要があります。

 

(最終更新日:2012/3/14)