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ギャンブル依存症について

 ギャンブル依存症というと、どのようなイメージをもたれますか?自分の周りにそのような人はいないな、と思ったかたも多いのではないでしょうか。

 まず、アメリカ精神医学会の診断基準、DSM-5をご紹介しましょう。

  1. 興奮を求めてギャンブルに使う金額が次第に増えている。

  2. ギャンブルをやめているとイライラして落ちつかない。

  3. 何度ギャンブルをやめようとしてもやめられない。

  4. いつも頭のなかでギャンブルのことばかり考えている。

  5. いやな感情や問題から逃れようとしてギャンブルをする。

  6. ギャンブルで負けたあと、負けを取り返そうとしてギャンブルをする。

  7. ギャンブルの問題を隠そうとして、家族や治療者やその他の人々に嘘をつく。

  8. ギャンブルのために、人間関係や仕事、学業などがそこなわれている。

  9. ギャンブルでつくった借金を他人に肩代わりしてもらっている。

 この9項目のうち、過去1年で4項目以上あてはまり、躁病(そうびょう)という精神状態を生じていない場合に診断をされます。

 ギャンブルは違法ですが、日本では競馬、競艇、競輪、オートレースは合法的な「公営ギャンブル」とされています。これらは自治体などが運営しておりますが、民間の会社が経営するパチンコやパチスロという「遊技場」も景品が換金できるため、事実上の「ギャンブル施設」となっています。

 2017年度の厚生労働省の調査では、ギャンブル依存症が疑われる人は約3.6%(約320万人)と推計されており、実はとても多くの方の治療が必要です。しかし、本人や家族は病気と自覚できず、治療につながらないことが多いのです。本人は困らず、むしろ経済面の問題から配偶者がうつ病になったり、その子どもが不登校になったり、本人の周囲の方々が深く傷つき大変な状況になることが多いのです。また、精神疾患の治療中に気分の高ぶりからギャンブル依存を併発、衝動コントロールや物事の見通しや計画が立てられない症状からギャンブル依存を併発する方もいます。

 ギャンブル依存症自体に効果がある薬剤はなく、治療法は自助グループへの参加と精神科医療の利用の継続となります。外来治療では、他の病状の方と同様に本人や家族の困りごとがないかをうかがうことと、自助グループへの参加継続の支援をしていくことになります。しかしながら、ギャンブル依存者をつくらないようにする社会政策の対応が必要となります。

 

(参考文献)

「やめられないギャンブル地獄からの生還」 帚木蓬生 集英社文庫 2019

 

(最終更新:2019.11.5/長谷川 洋)