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エイズの特効薬はあるの?

7月14日、アメリカ国立アレルギー感染症研究所は新しい抗エイズ薬「ネピラビン」の効果を発表しました。この新薬は分娩直前の母親と出生直後の新生児各々一回投与することで、エイズ感染経路の一つである母子感染をおさえることが出来るというものです。

エイズ感染は性交渉や血液など患者の体液に触れることがもっとも多い経路であることはすでに知られている通りです。血液を介する経路がありエイズを世代を超えて蔓延させる垂直感染として問題視されてきました。エイズ感染症が知られたころは、同性愛者や麻薬中毒者に多発したことから感染経路は限られていると考えられました。1997年には140万人もの患者が報告され、それには多くの経路がかかわってアジア、アフリカにも多発する事実が知られるようになり、今やエイズの爆発的な流行が心配されています。

エイズウイルスは核酸と逆転写酵素を持つ球形のウイルスです。1日100億個以上という速度で増殖を続けるウイルスの逆転写酵素の発育を阻害するのが今までのAZTやDD‐1といった薬剤です。今回発表されたネピラビンという薬は母親と新生児にそれぞれ一回投与すれば有効といわれています。ウイルスとリンパ球の10~15年という長い争いに介入して発症を遅れさせるいわゆる治療薬というよりは、アフリカなど年間30~40万といわれる垂直感染による新生児の発病が防げるだろうと期待されているのです。血友病患者に非加熱血液製剤を投与してエイズ感染を引き起こしたセンセーショナルな事件に人々は注目しました。しかしエイズはまだ知られざる点が多すぎて、登場してくる薬の効果も未だ結論が出ていないのが現実です。エイズの実体に正しい理解を持つこと、同時に自らの身を守る予防こそ現在の恐ろしい勢いで蔓延しているHIV対策であることをわすれないでください。