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ピロリ菌とはなんですか

 かなり以前に、人や動物の胃の中にらせん菌が棲みついていると報告した学者達がいました。しかし胃腸病の大家が多人数の胃を調べて、いかなる細菌も棲息していないと否定しました。それで胃の中には細菌は棲めないとの常識が生まれました。1966年に胃の粘膜のウレアーゼ活性が小腸や大腸の粘膜より高いことを日本の青年医師が発見しています。この事と胃のらせん菌とは結びつきませんでした。

 ようやく1979年にオーストラリアのウォレン教授が活動性慢性胃炎の粘膜に多数のらせん菌を発見しました。そして若いマーシャル博士と一緒に培養を試みましたが、なかなか成功しませんでした。ある時培養を忘れていて数日経って気がついてみると、なんと菌が生えていました。それが1983年でした。

 今ではヘリコバクター・ピロリと命名されていますが、一般にはピロリ菌と呼ばれています。胃の一部にある幽門(ゆうもん)部に棲みつくらせん菌という意味です。

 ピロリ菌はどの様にして胃に棲み着くかは分かっていませんが、飲み水や食べ物と一緒に口から入ると考えられています。そして数本の鞭毛(べんもう)を体の一端に持っていて、胃の中に入ってから粘膜層を泳ぐことができます。また、胃の粘膜に到着してしっかりとくっつくことができます。もう一つの特徴は、ウレアーゼという酵素を持っていて尿素を分解してアンモニアを作り、胃の塩酸を中和して胃に棲み着くことができます。

 アンモニアは胃の粘膜を障害しますし、有毒物質も作られます。また、ピロリ菌は胃の炎症を引き起こす因子を出したり、毒素などいろいろな物質を産成します。そのため急性胃炎、慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍の原因の一つとされています。慢性胃炎から胃がんが発生する場合に極めて関わりがあることはいまや疑う余地がありません。スナネズミでの実験で高率に胃がんが発生しています。

 胃の粘膜に関連するリンパ組織から悪性の度合いの低いリンパ腫が発生してきますが、ピロリ菌の感染で起こってくることも確実です。そしてピロリ菌の除菌によって病変が良性となったり、殆ど治ってしまうことが認められています。