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肝がんの早期発見

 最近は、肝臓がんの発症が著しく増加しています。1971年から80年と81年から90年と91年から95年の25年間の肝臓でのがんの発生数1.0:2.4:2.9との報告があります。またそれらの肝臓がんの発生する原因疾患では、慢性ウイルス性肝炎や各種の肝硬変が殆どです。ウイルスではB型、C型、非B非C型などがありますが、最近ではC型慢性肝炎やC型肝硬変が全体の8割近くとなっています。B型の慢性肝炎、肝硬変からの肝がんの発生頻度は減少していますが、実数ではいまのところそんなに減ってはいません。つまり、C型肝炎ウイルスに関連している肝炎や肝硬変からの肝臓がん発生の増加のためなのです。

 それではB型肝炎関連肝がんが減る傾向なのにC型肝炎関連肝がんがどうして増えたのでしょう。B型肝炎はその殆どが母親からの感染ですので、今ではワクチンによる予防効果のためB型肝炎ウイルスの保持者すなわちキャリアーが激減しています。これに対してC型肝炎ウイルスが遅くに発見され、そのワクチンもまだできていないのが現状です。また、C型肝炎は過去の輸血、注射やいれずみなど直接体の中に入った場合に感染しますが、ウイルスを検出する検査がなかったので、予防対策がありませんでした。現在ではその検査が行き渡っていますので、あらたな感染の発生は激減しています。

 C型慢性肝炎はウイルス感染後20年以上を経て徐々に発病して、さらに10年から15年くらいで肝硬変へと発展します。発がんまでの期間は平均して35年位です。そのためかなり病状が進んでから病気に気づくことが多いのです。ですから、健康診断などで肝機能検査で少しでも異常があれば、肝炎関連のウイルス検査を必ず受けることが大切です。肝炎関連ウイルス検査でB型やC型ウイルスの感染が明らかになった場合はさらに精密検査が必要です。そして、その肝炎や肝硬変の程度や時期に応じた治療を受けることが大切です。最近の肝炎や肝硬変の治療では、肝がんの発生の危険性を減らすことが明らかになりつつあります。すなわち肝臓がんの発生を遅らせたり、予防の効果も出てきています。