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肝硬変といわれたら

 肝臓の細胞は再生力が旺盛で、何らかの原因で一部が死んでも新しい細胞が再生してきます。しかしこのようなことを長年繰り返ししていると、細胞の間に繊維ができてきて瘤状になってきます。このような変化が肝臓全体に起こって、肝臓の表面が凹凸になった状態です。それ故肝臓全体が硬くなってしまいます。一旦このような変化が起きると、もはやもとにもどることはありません。

 肝硬変はウイルス性肝炎、アルコール性肝障害、胆汁鬱滞などのいろいろの原因で起こりますが、慢性の肝臓病の終末像などと言われていましたが、その病状は初期の段階から末期の段階までいろいろです。また肝臓の働きも殆ど正常のものから、極度に低下しているものまでさまざまです。かつては肝硬変の予後は非常に悲観的でありましたが、最近では内科的治療法や外科的治療法が急速に進歩してきており、すぐに死にいたる病気とはいえなくなってきています。ただし、定期的な診察・検査は欠かさずに受けて、医師の指示に基づいた生活の管理を厳重に守ることが絶対に必要です。

 病状が安定している肝硬変の治療では日常生活の適切な注意を守ることが重要です。食事は偏食せずに、栄養のバランスのとれた食物を摂ることが必要です。つまり、蛋白質は1日体重1kg当たり1.5g位で十分です。脂肪はとりすぎないように、総カロリーを抑えて肥満にならないようにします。お酒はアルコール性のものは勿論禁酒とすべきですが、ウイルス性でも飲酒を控えるとそれだけで肝機能の改善が得られます。運動は過激なものは好ましくありませんが、ウォーキングなどはむしろよいでしょう。

 腹水のある場合では最近の強力な利尿剤で比較的容易にコントロールできるようになってきていますが、蛋白質をやや多めにとることと塩分の摂飲を少なめにすることが必要です。肝性脳症といわれる状態では、血液中のアンモニアが増えているため意識障害を起こしていますので、この治療を合わせて行ないますが食事でも蛋白質の摂取量を減らすことが必要です。更に肝硬変が進むといろいろな合併症が生じてきます。

 その一番は食道静脈瘤です。これは食道の静脈の壁が瘤のように膨らんで数珠状を呈してきます。ときに破裂して大出血を起こし、生命を脅かします。緊急の処置が必要です。最近は内視鏡を用いて予め破裂しそうな静脈瘤を潰してしまう硬化療法が行われています。二番目は肝臓がんの発生です。これに対しても最近の画像検査や治療法が進歩しており、早期発見、早期治療がおこなわれるようになっています。