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車に乗ると吐きやすい

 乗物酔いは加速度病とかゆらぎ病ともいわれるように、乗物などによる動揺が身体に加わって、内耳にある前庭迷路に異常な加速度刺激が繰り返し作用して、自律神経の働きが乱されてしまって起こる失調症状と考えられています。

 内耳の前庭系には三半規管と耳石器があって三半規管は回転運動を、耳石器は位置覚や直線運動を認識する働きを持っています。乗物酔いということは、その運動が耳石器に作用して起こると思われているのですが、乗物の動きはかなり複雑で回転刺激による三半規管への影響も無視はできません。

 飛行機や自動車教習所のシミュレーション運転でも同じ症状を起こしたり、宇宙飛行士の宇宙酔いも似た症状がみられるので、空間を認識する働きが普通の身体の動きと異なった時に起こる異常な生体反応と広く解釈されています。

 乗物酔いを起こす外的因子として、視覚の影響、不快な臭いなどの周囲の状況、内的因子として睡眠不足、胃腸の不調や不安感などの心理的影響がからんでいるので、最近では中枢神経系の感覚機能が混乱するために起こると広く解釈されるようになっています。

 いつもは健康で何一つ問題になることはないのに、乗物に乗ると頭重感や生あくび、生唾などが出て、胸苦しさ、手足の冷感、ふらふら感、吐き気や嘔吐をしてしまうのが乗り物酔いの症状です。

 対策としては、睡眠不足や過度の空腹や満腹は避けて、腹八分目で乗り物に乗ることを心がけて下さい。動揺の少ない席を選び、換気のよい場所を選んで下さい。飛行機などではノースモーキングシートを選びましょう。本を読んだりすると外因としての視覚からの刺激が酔いを誘発することがあります。モータースポーツでドライバーは平気なのに助手席にいて地図をみつめる役目のナビゲーターが車酔いしやすいことはよく知られています。

 一度乗り物酔いすると乗り物に対する不安感が心理的誘発原因となりやすいものです。たいしたことはないと力づけて、乗り物を恐れずむしろ慣らさせることが必要です。内耳前庭系は慣れ現象があり、鍛練効果があることが知られています。マットでの宙返り、鉄棒、ブランコなどの耐性訓練、テニスや卓球の球を目で繰り返し追ったり、メトロノームを利用する視覚的訓練も効果があります。

 しかし、どうしても効果のない時は抗ヒスタミン剤、精神安定剤などを乗車一時間前に服用してください。

 一度乗り物酔いを上手にのりきってしまうと、その後は大丈夫という人が多いのです。