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高血圧

 生活習慣病といわれる病気の中で高血圧に罹患している人が最も多く約4,300万人、日本人の成人の3人に1人が罹患する病気です。その中で血圧が適正にコントロールされているのは、わずか1,200万人しかいないといわれています(高血圧治療ガイドライン2019 P.ⅶ)。高血圧は脳卒中や心臓病の最大の危険因子です。高血圧を治療することはこれらの病気を予防することが目的です。高血圧は原因がわからない本態性高血圧が9割を占めます。残り1割が血圧を上昇させる何らかの原因があり、その原因によって高血圧になることより二次性高血圧といいます。二次性高血圧の代表的なものに、腎血管性高血圧、原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫、睡眠時無呼吸症候群などがあります。(日本内科学会雑誌107巻 1752-1787 ) 高血圧と診断されたら、まず二次性高血圧の検討が必要になります。二次性高血圧については、紙面の関係上詳細は省きます。

 

<高血圧の診断> 

  1. 診察室血圧:日を変えて(2機会以上)診察室で血圧を計ります。血圧を計る際は1-2分の間隔を空けて複数回計ります。複数回計った血圧の差が5mmHg未満の血圧を採用して2回の平均をとり、それが140/90mmHg以上だった場合高血圧と診断します。
  2. 家庭血圧:朝・晩血圧を7日間(少なくとも5日間)計りそれぞれの平均値を求め、朝・晩のどちらかまたは両方とも135/85Hg以上の場合高血圧と診断します。
  3. 24時間自由行動下血圧:24時間自動的に血圧測定が出来る血圧計を身体につけて測定します。24時間血圧平均が130/80Hg以上、昼間血圧平均が135/85Hg以上、夜間血圧平均が120/70Hg以上のいずれかに該当した場合を高血圧と診断します。

 

 よく、医師の前で計ると血圧が高くなるが、家で計ると正常の人がいます。またこの逆の人もいます。一体どっちが正しいのでしょうか?この場合、家庭血圧を採用します。前者を白衣高血圧、後者を仮面高血圧といいます。前者は後者に比べて前述した高血圧によって引き起こされる脳卒中や心臓病になりにくいといわれています。後者は常に血圧が高い持続性高血圧の人と同程度のリスクがあります。(高血圧治療ガイドライン2019)。

 以上より家庭血圧が非常に重要な役割を果たしていることがお分かり頂けたと思います。高血圧治療は、家庭血圧を参考にして治療していると言っても過言ではありません。そのため、高血圧の方は家庭血圧計を用意して頂き、朝と寝る前の血圧を測って記録しましょう。 

 それでは、家庭血圧を計るためには、どのような血圧計が良いのかといいますと、上腕用血圧計がお勧めです。指で計る血圧計や手首で計る血圧計は正確に計れないことが多いのでお勧めできません。 

 家庭血圧の計り方ですが、(高血圧治療ガイドライン20019の表2-3のように)いくつかの条件が付いています。毎日の生活の中で毎回この条件のすべてを満たして血圧を測定するのは大変なので努力目標ととらえてください。そのために長期間に渡って計って頂いた血圧値を平均して評価します。

 

<高血圧の治療>

 さて、高血圧と診断されたら、上述したように脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の予防のために降圧目標(高血圧治療ガイドライン20019の表3-3)に向けて治療を行います。

 高血圧治療の第一段階は、生活習慣の修正です。塩分摂取量を6/日を目標に減らし、カリウム摂取量を3.5/日を目標に摂ることが重要です。但し腎臓の悪い人はカリウム制限が必要なので、主治医と相談しながら行う必要があります。また、肥満がある場合はBMI25や腹囲(男性<85㎝、女性<90)を目標に減量することが重要です。適度な運動(きつくない程度)も血圧を低下させます。血圧が高い(収縮期血圧≧180または拡張期血圧≧110)場合や脳心血管病がある人は運動によって血圧が上昇してしまうことがあるため、主治医と相談して事前にメディカルチェックを行う必要があります。その他、節酒(アルコール量として男性20-30g/日、女性10-20g/)や禁煙が重要です。また、高血圧以外に動脈硬化を進めてしまう要因を確認します。それらと血圧の値を総合してリスク(危険度)を評価します。(高血圧治療ガイドライン20019の表3-2)

 第二段階は薬物療法です。生活習慣の修正を行っても高血圧が改善しない場合は薬物療法を行います。降圧薬は数多く出ていますが、どの薬を選択するかは、高血圧以外の病気を併せ持つ場合か持たない場合かで異なります。一つの降圧薬で降圧目標が達成できない場合は、他の降圧薬を組み合わせます。これは同一の降圧薬を増量するよりも降圧効果が大きいことが証明されているからです。薬の種類が増えることに抵抗がある方がいらっしゃいますが、上述しましたように高血圧の治療の目的は、脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の予防のためですのでご理解いただきたいと思います。

 高血圧治療は、降圧薬を服用してさえいれば良いというものではありません。現在の治療で目標としている動脈硬化がどれだけ進んでいるのか、高血圧によって臓器障害が生じてないのかなどの評価を行う必要があります。その為には、定期的な検査を行う必要があります。もともと合併症をもった高血圧では定期検査の頻度は更に増加します。

(最終更新:2024.3.26/鈴木悦朗)