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肺がんの予防

 現在では、中高年の男性のがんでは肺がんが最も急激に増加しており、1997年には胃がんを追い越してトップとなりました。胃がんはかなり検診が進み、早期に発見されて治るものが半数を超えるようになっています。一方肺がんは従来から胸部のX線写真撮影が広く行われているにもかかわらず、かなり大きくなってから発見されることが多く、現在でもなお治療も難しく、予後も余りよくありません。

 肺がんは従来以上に、2次予防すなわち早期発見、早期治療を進めることが一番の急務です。つまり少しでも異常な症状、例えば空咳が2週間以上続くとか、痰に血が混じるとかの症状があったならば、直ちに掛かりつけ医師に相談したり、胸のX線写真撮影を進んで受けるようにしましょう。また定期検診は必ず受けましょう。しかし、これだけでは十分ではありません。やはりもっと積極的な予防を考えなければなりません。たばこを吸っている人は、まず喫煙はやめるか、出来るだけ減らすのが最も手短で、効果的な方法です。

 がんの発生は長い年月をかけて、いくつもの段階を経て発生します。正常な細胞の遺伝子が発がん物質などによって傷を受けて、がんの芽が出来てくる段階での予防が1次予防です。つまり、これはがんの芽を出さないようにすることです。これには、環境中の発がん物質をできるだけ少なくするとか、遺伝子に傷ができるのを防ぐビタミンCやEなどの抗酸化物質を多く取るというのが基本的な予防法です。しかし発がん物質を完全に取り除くことなどは不可能ですし、体内で発生する活性酸素もあります。またビタミンCやEなどの抗酸化物質も取り過ぎると発がんを促進するとも言われています。どのくらい取ったらよいのかも個人差があり、はっきり決められません。

 もう一つの予防法は、1.5次予防ともいわれます。前癌病変というがんの芽が育つ時期は非常に長く、10年以上かかります。この段階での予防、つまりがんの芽を育てない予防法です。遺伝子が傷ついた細胞の増殖を促進する物質は正常な人でも体内に常にいろいろあります。これらの物質の働きを抑制する物質を外から取り入れることが必要です。このような予防は、がんの発生を防いだり、発がんを遅らせたりする効果があると考えられます。最近、このような作用のある物質として、緑茶が注目をあびています。緑茶のしぶみの成分であるカテキン類と呼ばれる物質が発がんを抑制すると言われています。緑茶を好む日本人に肺がんがすくなく、緑茶を飲まない欧米人に肺がんが多いのだという学者もいます。