保険医の生活と権利を守り、国民医療の
向上をめざす

健康ファイルボックス

病気や健康に関する知識をお届けします

TOP > 健康ファイルボックス > 内科 > 発熱と解熱剤

発熱と解熱剤

 皆さんは熱が出た時には如何されていますか?特に小児では発熱する機会も多く、医療機関からの処方や市販の薬の御世話になった事も少なくないと思います。

 発熱が生じること自体は、怠くて起きられないとか、食欲が落ち消耗するという点を除き、決して有害な事象ではありません。ヒトに限らず単細胞の生物であっても、その生命活動の極小単位は酵素による生化学反応に帰着します。甘酒やパン生地を温かくして寝せる発酵過程に代表される様に、酵素反応には至適温度と云う最も効率良く生化学反応が進行する温度が有り、ヒト免疫系の多くの過程は38?40度にあって、炎症で体温が上昇する事は非常に理にかなった現象なのです。

 発熱時には、特に小児や老人では脱水に留意して水分の摂取に努め、本人が寒くてガタガタいっている時を除き、冷却をしましょう。基本的には首の後ろに保冷材をタオル等で包んで敷いて寝れば良いのですが、追いつかない場合には、腋の下や股の付け根等の太い動脈が浅い部分を通っている部位も冷やします。乳幼児で枕を嫌がる場合には親御さんが向かい合わせに抱っこして、子供の胸から上に当たるように布で包んだ保冷材を間に挟み込みますと、大人しく側頚部から頬の部分を冷やさせてくれ、親御さんも冷え過ぎを検知出来るので御奨めです。尚、オデコの部分には動脈が通っていないので、冷却をしても気持ち良く感じる程度以上の効果はあまり期待できません。

 解熱剤とは、局所の炎症で増加している化学物質そのものの作用を抑えたり、脳の体温調節中枢に働きかける薬品です。しかし、発熱の原因となった感染症等を治す原因治療薬ではないので、見掛けの症状を一時的には改善しますが、決して治っている訳ではありませんので、過信や乱用は避けるべきです。西洋薬・漢方を問わず、市販の風邪薬の多くは既に解熱成分を含みますので、咳などの他症状が悪化したり、発熱が長期化した場合等には、必ず医療機関を受診して下さい。尚、一部の解熱剤はインフルエンザ等の特殊なウィルス感染症において、非常に稀とは言え生還率が3割を切る様な重篤な副作用を生じる場合が有りますので、無闇な使用は非常に危険です。