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風邪と漢方薬

 漢方薬は約2000年前の古代中国、後漢の時代に朝鮮半島を経由して伝えられました。この時代のものが現代社会においても用いられていることは極めて珍しいことであります。漢方の得意とする分野の一つに風邪症候群があります。現代薬においては、風邪の処方薬のほとんどは消炎、解熱、鎮痛剤、鎮咳、去啖剤、抗アレルギー剤、抗菌剤のいずれかに含まれており、これらの組み合わせで処方されています。この処方の対象となる患者さんは子供と大人、体の強い・弱い、病気の重さにはさほど考慮されることなく処方されます。これに対して漢方薬は患者さんの証(しょう)としての体力や体質を診て、それに今かかっている風邪がどのあたりの病気の時期であるかを判断して処方されますので、その処方は多岐にわたるのです。処方される漢方薬には一般的には複数の種類の生薬(しょうやく)が配合されています。生薬には植物の根や茎、果実が用いられていますが、その他には動物性や鉱物性のものもあります。いくつもの生薬の組み合わせにより効果を発揮しますが、その効果はマイルドですから妊娠中の婦人にも比較的安全に用いることができるといえます。風邪は急性期、亜急性期、回復期、慢性期の4期に分けられます。また胃腸が丈夫、普通、弱い、極めて虚弱の4段階に分けられます。風邪の急性期にもっとも問題になるのが発熱です。特に小児の場合には熱が高くなると、合併症がなかったら、発熱による脱水と体力の消耗が心配ですから、十分な手当てと水分補給に努めましょう。体力のある学童や成人においては漢方の解熱作用はマイルドですが、暖かい食べ物や水分の補給をしながら時間をかけて熱を下げることは、免疫学的な立場からも体にとってはもっとも良い方法であると考えられます。