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シャイ・ドレーガード症候群

  最近一般の人の間でも「症候群」という表現が使われることが多いようです。シャイ・ドレーガー症候群というのは原因不明の起立性低血圧に自律神経障害や神経症状が現れる病気で40~60才代に多くみられ、男性に多いとされています。

  1960年にShyとDragerが特徴的な自律神経神経症状を呈した患者のうち、自律神経系の変性だけでなく、小脳や脊髄や神経反射のすじみちなど多系統の変性を示す病気を報告しました。英語のShy‐Drager syndromeの頭文字をとりSDSとも呼ばれ、厚生省の特定疾患に指定されている多系統神経萎縮症の一つとして原因と治療の究明が行われています。

  臨床症状は40~60才に立ちくらみや失神発作、排尿困難などの自律神経障害で始まることが多く、ゆっくりと進行します。起立性低血圧による立ちくらみや失神発作のほかに、便が出にくい、尿が漏れる、便秘、インポテンス、発汗異常などの自律神経障害が生じてきます。病気が進んでくると言葉の不明瞭、歩行時のふらつきなどの小脳症状や筋肉のこわばりや、動作緩慢といったパーキンソン症状、筋肉のやせ、いびき、睡眠時の無呼吸症状などが現れて来ます。この症状は従来から知られていたオリーブ橋小脳変性症やパーキンソン病と重りあう症状があることから多系統萎縮症とも呼ばれているわけです。

  診断は特徴的な臨床症状を段階的に追うことで可能ですが、MRIの画像で専門医は診断します。

  この症候群には根本的に治療法はありません。対症療法として起立性低血圧の薬物療法、排尿障害、インポテンツに対する療法、パーキンソン症状に対する抗パーキンソン薬の使用がある程度有効ですが、特効薬は無いのが現状です。

  起立性低血圧や発熱があることから、活動しなくなり筋萎縮、筋力低下など運動機能が低下します。PTかOTの協力を得て、筋肉トレーニングなどで運動機能の低下をなるべく防ぐ必要があります。起床時にウォームアップしてから起きる習慣を守るとか、末梢血管を拡張させる怖れのあるアルコール飲料の制限など専門医との適切なチームワークが必要な病気といえます。