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狂牛病とは何か?

  狂牛病という珍しい病気が問題にされています。これはゆっくり発症してきて、中枢神経系を侵す感染でヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病と似て、解剖した脳の組織がすべて海綿状に変性してしまうという恐ろしい病気です。ウイルスとは違ってプリオンという特殊な蛋白によって神経系がおかされることからプリオン病といわれています。ヒトのプリオン病にはクロイツフェルト・ヤコブ病とニューギニアの高地人のクール病が代表的な例です。

  ヒト・プリオン病は60歳前後に発症して日常生活での異常行動や記憶障害といった痴呆症状で発症します。老人ボケの場合と違って1~数ヶ月以内に症状が急激に進行し見当職障害から全く自発運動を失ってしまうのに半年もかかりません。感情も失われ、寝たきりの廃人同様となり1~1.5年以内に死に至るといった悲惨な経過をとります。全身疾痛や四肢の不随意運動に対して対症的な処置しか方法がなく現在までのところでは治療法はありません。診断はMRIなどの脳の画像で急速に進行する脳の萎縮を認めること、脳波で周期性のある徐波群が全般的に出現することが決め手になります。ところが1993年脳波は正常で、しかも若い人がクロイツフェルト・ヤコブ病で死亡したケースがイギリスで報告され、1987年から130万頭に発生した狂半病のプリオン病との関連が問題になりました。この新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病が牛から感染したかも知れないことからパニックとなったのです。厚生省も平成8年に緊急調査研究班を設置し調査を始めましたが、脳外科手術ヒト硬膜移植や脳下垂体成長ホルモンの注射によるもの、角膜移植によるものが報告されています。医療が原因となることから医原性クロイツフェルト・ヤコブ病と呼ばれています。

  プリオン病はプリオン蛋白が突然異常になることにより発病しますが、異常になった蛋白が沈着して病気になることははっきりしているものの、決定的な結論はでていません。特にわが国では医原性クロイツフェルト・ヤコブ病43報告例のうち、42例は脳外科手術、1例は整形外科の後継靱帯骨化症手術でヒト硬膜を移植したものであることがわかりました。1970年代から1987年までに脳外科手術を受けた人はCTやMRIの再検査を受けることを専門家が勧める理由がそこにあります。