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未破裂脳動脈瘤

 破裂して重大なくも膜下出血を起こす脳動脈瘤は約50%は死亡するものとされてきました。運よく脳神経外科に入院できて、開頭術によって助かったとしても、くも膜下出血の出血量や破裂した動脈瘤がどの場所だったのか、又くも膜下出血による脳血管の痙攣による脳血流の障害や、脳のはれによる呼吸障害や意識障害などで予後が大きく変わってしまうのです。かつては破裂してから脳外科へ運びこまれ、脳血管撮影などを行ってから手術することから、破裂からの手術迄の時間や、搬入された脳神経外科の機能レベル、そして開頭術を行う脳神経外科医の脳動脈手術の技量によってその成績にかなり差があったことは事実です。マイクロサージェリーといって顕微鏡による手術や開頭せずに形状記憶合金を動脈を経由して動脈瘤内へ注入して血栓を造って動脈瘤をつぶす血管内手術などの技術が導入されても脳外科の取り扱う疾患では最重症疾患の一つであることには違いありません。これは脳動脈瘤の殆どがくも膜下出血を起こしてから初めて色々な症状を起こし治療が開始されたためなのです。

 ところで脳ドックが普及してきて、MRAによって破裂する前に動脈瘤が発見されるようになり、くも膜出血を起こす危険性を現時点では全く予知できぬことから未破裂動脈瘤をどう処置するかが専門医で大きな問題点となっています。1998年イギリス内科学会誌によって単一の脳動脈瘤の破裂する率は年間0.05%で、多くの脳動脈瘤が多発性であることから破裂した動脈瘤の場合、偶発的に見つかる未破裂脳動脈瘤の破裂率は約0.5%であることが報告されました。

 それ以来一部の内科医、神経内科医は非手術も一つの選択であるという考えを持っています。しかし脳動脈瘤は血圧やコレステロール等のデータや、運動管理を厳重に行っても破裂を予知することは不可能であることや、その統計も対象がある程度限られた集団であったことで、不十分だという反省があります。症状のあるなしに拘わらず、原則的には未破裂脳動脈瘤は手術的治療法を第一選択とすべきことは、経験ある脳神経外科医の一致した見解です。破裂してからでは致命率の高いことは従来その治療をまかされてきた脳外科医が一番知っています。破裂脳動脈瘤の手術数及び手術成績が豊富かつ十分である脳神経外科医の常勤する施設と相談することが必要であることはいうまでもありません。