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アレルギー性鼻炎に対するレーザー治療について

  Q. レーザー治療とはどのようなものですか?

  A. 鼻粘膜にレーザー光線をあてて粘膜表面を焼いて(蒸散といいます)、アレルギー反応を起こしにくい再生粘膜に変化させるという治療法です。レーザーの種類は、炭酸ガスレーザー、YAGレーザーなどがあります。最近では厳密にはレーザーではないですが、アルゴンプラズマ凝固療法という治療がありますが、原理、目的はほぼ同様です。

アレルギー性鼻炎では花粉やホコリ・ダニの成分など、アレルギー反応をおこす原因物質(抗原)が外から鼻内に吸い込まれ、鼻粘膜に吸着することによりくしゃみ・水様性鼻汁・鼻閉といった症状が起こります。

レーザー治療では、このアレルギー反応が起こる場、つまり鼻粘膜を蒸散することにより次のような原理で症状の改善が得られます。

レーザーにより粘膜表面の細胞・組織の変成がおこり、2~4週間で焼かれた粘膜が繊維化・瘢痕化を伴って修復されます。再生粘膜には粘膜表面にあるレセプター(抗原をとりこむ場所)が少なくなるため、アレルギー反応を起こしにくくなります。また鼻腺が減少するため鼻汁分泌が抑えられ、鼻粘膜に分布している知覚神経が減少するためくしゃみ発作が起こりにくくなります。さらに粘膜の瘢痕収縮により鼻粘膜の腫れが軽減され、鼻閉も抑えられます。

 

  Q. どのような方にすすめられますか?

  A. 外来通院で内服・点鼻など一般的な治療方法では症状の軽快がみられない場合や、アレルギーの原因がホコリ・ダニのため、年中症状がある場合などで、とくに鼻粘膜の腫れが強く鼻閉が高度な方にすすめられます。また、薬剤治療が制限される妊婦さんや、これから妊娠を希望される方、他の疾患のため抗アレルギー剤などの使用が難しい方にもすすめられることがあります。小児では治療が理解できる小学校高学年ごろから手術をうけられると考えられます。季節性のアレルギー性鼻炎、特に花粉症の方は花粉飛散の1ヶ月ほど前までに受けるとよいでしょう。

逆に、鼻中隔(鼻の中を左右に隔てている壁)湾曲の強い方、一人でいすに座れない小児など手術が施行できない場合もあります。

 

  Q. 治療の実際はどのようなものでしょうか?

  A. レーザー手術とはいっても、通常の耳鼻科外来処置と同じように受けることができます。実際は麻酔薬のついたガーゼを鼻内に入れ、鼻粘膜に表面麻酔を行った後にレーザーを照射します。時間は麻酔に20分ほど、手術そのものは10~15分程度で終了します。出血もほとんどないため、外来日帰り手術が可能です。施行回数は症状によりますが1~数回で十分効果が得られます。

術後しばらくは鼻内に痂皮(かさぶた)の付着や一過性の鼻粘膜腫脹のため、数日間はかえって鼻閉が強くなる時期がありますが、1~2週間で軽快してきます。

 

  Q. 効果はどれくらいでしょうか?

  A. 一般的に鼻閉に対しては80~90%、鼻汁は70%、くしゃみは60~70%の改善があると報告されています。

レーザーを照射する範囲は主に下鼻甲介という、粘膜変化の強い部分のみで他の部分には照射しませんのでその部分にはわずかでもアレルギー反応が起こってしまいます。また、花粉症で眼症状、のどの症状を併発する方は、鼻以外のそれぞれの症状は改善されません。

また、1年ほど経過すると粘膜の再増殖が起こり、再び症状が悪くなる方もいらっしゃいますので、その都度手術を繰り返すこともありますが、ずっとよいままの方もいらっしゃいます。

嗅覚に関しては、嗅覚を司る部分はレーザーを照射しないので原理上、悪化することはありません。鼻閉が軽減されることにより嗅覚障害の改善が期待できます。

 

  Q. 費用はどのくらいでしょうか?

  A. 手術は健康保険が適用されますので、手術だけなら両側の場合、1割負担で1,800円、3割負担で5,400円となります。ただし、この他に診察料や薬剤代が加わります。詳しいことは、直接医療機関に問い合わせた方がよいでしょう。