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頚部の腫瘤

 首は頭と体を結ぶ役目をしており、その狭い場所に前方から後方に向かって喉頭、気管、食道、頚椎があり、それらを囲むように、血管や神経それに筋肉が非常に緻密に配列され、直接皮膚に覆われています。ですから、そこになにか異常が生じると目で見たり、触れたりすることができるのです。その腫瘤が頚部の臓器の炎症によるのか、リンパ節の炎症によるのか、腫瘍性の病変によるのかをきちんと鑑別しなければなりません。さらに炎症性の病変ならばその原因を、また腫瘍性の病変なら良性か悪性かを診断することが大切になります。急性の炎症症状はその部位の発赤、腫脹と熱感、痛みを訴えます。最も多いのが、リンパ節の炎症です。口から侵入したウイルスや細菌はリンパ管に流れ込むと、リンパ節のところで白血球などの炎症性細胞の攻撃を受けます。この戦っている状態が「リンパ節の腫れ」として分かるのです。それぞれのリンパ節に流れ込むリンパ管の領域は決まっていますから、どのリンパ節がはれているかで、体のどの部分から病原体が侵入したかを知ることが出来ます。喉ぼとけの両サイドにあるのが甲状腺ですが、この部位に炎症のサインを認めることがあります。これは亜急性甲状腺炎の疑いがありますから、甲状腺の血液検査が必要で、診断が確定されればステロイドが有効です。再び注目されているのが、結核性のリンパ節炎です。これは腫れているのに自発痛が軽い場合が多いようです。ツベルクリン検査が必要です。反対に炎症のサインがなくて次第に大きさや数が増大するリンパ節は要注意です。悪性のリンパ腫か転移性のリンパ節の腫れを考えます。悪性リンパ腫の3分の1は頭頚部領域から発生していますが、悪性度の判定や治療法の選択のためには正確な組織診断が必要です。現在は放射線治療と化学療法の併用で生存率は良くなっています。転移性の場合にはリンパ節の位置から想定される耳、鼻、咽頭、喉頭などの原発部位をCTやMRIや細胞診などで入念にチェックすることが大切です。

 

(最終更新日:2010/3/26)