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人工中耳

 音は外耳道から鼓膜にとどき、鼓膜の振動はツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨に伝わり、次に内耳から聞こえの神経を介して大脳に達するとその音を理解できるのです。

 補聴器は耳に入ってくる音を鼓膜の前で増幅して、中耳や内耳の機能障害をカバーしようとする器械です。これに対して日本で開発された人工中耳は耳に入ってくる音を、中耳の音を伝える器械をバイパスして、直接アブミ骨を振動させて内耳に送り届けようとするものです。人工中耳は慢性の中耳炎をこじらせた耳で「耳元で怒鳴ると聞こえる」程度の混合難聴に適応されます。

 聴力が落ちているからといってすぐに人工中耳を植え込めるということではなく、まず中耳の手術をしても聴力が改善されない場合に植え込むのを原則としています。人工中耳は音質が良く、騒音の中でもよく聞き取れること、耳栓を必要としないため音が重なる等のハウリングがないなどの利点があります。

 これに対して補聴器はほとんどの難聴に適応できるため、人工中耳では、カバーできない難聴でも、上手に選んで上手に使えば十分にカバーできます。また購入、修理や交換が簡単であることや両耳に装着できること。手術をしなくてもよい事など、肉体的にも経済的にも負担が少ないことなどの利点があります。

 人工中耳は補聴器を必要とされる難聴者の中で、中等度の難聴者を対象に年間で2000人ほどが手術を受けています。また、手術は高度先進医療を扱う許可を受けた医療機関で行います。

 今後の課題としては機器の一層の小型化や向上、また、電池の高性能化、そして、健康保険の適用を受けるようになればさらに多くの施設で手術が受けられるようになり、難聴者にとってまさに副音となるでしょう。