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唾石(だせき)

 唾石は大部分が両側の顎の下にある顎下腺にできて、両側の耳の下方に位置する耳下腺はまれです。石の成分はリン酸カルシウムですが、特に顎下腺の分泌液にはカルシウムとリン酸塩の含有量が高く、粘稠性であり、また腺実質より口の中の閉口部の方が上にあり、さらに管が長いために、顎下腺に多いのだと考えられています。しかし耳下腺に唾石ができた場合には、小児においてはまれですが、成人では耳下腺が腫れたり、反復する耳下腺炎の原因となります。耳下腺は炎症を起こしやすい唾液腺ですから、単なる慢性の反復性の耳下腺炎でも、赤く腫れたり、食事のとき噛む運動により痛みを感じることがあるので、石によるか、炎症によるかの鑑別には注意が必要です。唾石が管の中にある時は、それが管腔を塞ぐため、食事をすると徐々に強い痛みを感じるようになり、顎の下の腫瘤はクルミ大ほどの大きさにまで増大してきます。完全に管腔が塞がれていないときには、その腫瘤は徐々に小さくなってゆき、自覚症状は消失してしまいます。これを繰り返すことがありますが、こうした場合には舌(ゼツ)の下の部分で指先に石が触れることがあります。診断は単純X線写真で石が分かることが多いのですが、結石にカルシウムの沈着が不十分ですと写らないことがあり、特に耳下腺では写り難いようです。次に唾液腺の造影を行なうと、顎下腺では陰影の欠損が参考になりますが、耳下腺では判読が難しいことが多く、CTやエコーによって証明されます。治療は小さいものは洗浄して排出できることもありますが、顎下腺の管の閉口部付近にあるときは、口の中からその部分を切開して摘出します。移行部や顎下腺の内部にあるときには、顎下腺を摘出する手術が適応となります。最近体外からの衝撃波による結石紛砕術がこの唾石症にも応用されるようになり、これから期待される治療法です。

 

(最終更新日:2010/3/26)