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反復性耳下腺炎

 小児期に耳下腺を腫らす病気で多いのは流行性耳下腺炎(りゅうこうせいじかせんえん)で、ムンプスまたはおたふくかぜとも言います。これは通常は発熱に伴って両方の耳下腺さらにはあごの下の顎下腺が腫れるもので、一度これにかかるとムンプスウイルスに対する抗体が出来るため大多数は2度と腫れることはありません。

 ところが5~6歳をピークに一年に数回耳下腺を腫らす場合があります。これを反復性の耳下腺炎といいます。この場合の耳下腺の腫れは片方だけのものが多く、軽い痛みを伴って腫れてきますが、ムンプスほどその腫れは強くありませんし、皮膚が赤くなることもありません。時には軽度の発熱を伴うこともありますから、小児期に初めて腫れたときはどちらの病気か診断に迷うこともあります。

 ほかに片側だけの耳下腺が腫れるものに急性化膿性(きゅうせいかのうせい)耳下腺炎がありますが、これは半球状に激しく腫れ、強い痛みや高い熱がでて、局所にも強い熱感を伴います。時には炎症が周りに波及してくると、口を開けることもできなくなってしまいますので、その症状は反復性の場合より激しいと言えます。

 幸いに繰り返す腫れは思春期にはほとんどなくなってしまいます。この診断には唾液腺(だえきせん)の造影により典型的な所見を認めることができます。血液学的な検査では、白血球が増加して、血清アミラーゼが上昇することがあります。

 耳下腺を軽くマッサージすると口の中の頬の粘膜にある開口部(かいこうぶ)より膿が出てくることがあります。この場合には化膿性の耳下腺炎の疑いもありますから、1週間から10日間、抗生剤を飲むことが必要です。さらに腫れがひかない場合には耳下腺を洗浄することもあります。

 再び腫れるのを予防するには確実な方法はありませんが、ガムを噛んだり、耳下腺のマッサージは効果がある場合もあります。これはいずれ自然治癒していくものですから、腫れたときにはその都度、耳鼻咽喉科で診てもらい、保存的な治療で時期がくるのを待つ方がよいでしょう。

 

(最終更新:2018.9.21/東山佳澄)