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扁桃炎とは

 扁桃炎のことを以前は扁桃腺炎と呼んでいました。しかし扁桃は唾液腺や涙腺のように分泌液を出す器官ではなく、リンパ組織ですから、そこに炎症を起こした場合には、正しくは扁桃炎ということになります。

 扁桃という名称は、地中海地方に咲いていたアーモンドの果実が桃に似ていたのでつけられたそうです。一般的には、扁桃は口を大きく開けるとノドの奥に見える小さな梅干し大の二つの口蓋扁桃のことをさしています。その他に鼻の突き当たりでノドの天井のあたりにあるアデノイドとも呼ばれている咽頭扁桃、そのわきにある鼻と耳とをつないでいる耳管の入り口の回りにある耳管扁桃、それに舌のつけねのところにある舌扁桃と四対あって、それがちょうどそとからの異物の侵入に対して防御するかのように正面からみて輪のようになっています。ワルダイエル扁桃輪と呼びます。

 扁桃は咽頭の粘膜内に発達したリンパ組織であり、免疫をつかさどる臓器ですから、外からの異物や細菌、それにウイルスが鼻や口から侵入してくると免疫機構が働いて、それら抗原に対する抗体としてガンマグロブリンなどを生産して、病気にならない様に機能しています。この働きは4、5歳から活発になり7、8歳でピークに達して、思春期以後は次第に退化していきます。

 扁桃の組織は、たくさんの陰窩(いんか)と言われる表面にあばたのように見える小さなへこみとリンパ濾胞(ろほう)という組織からなっています。陰窩には、常在菌としていろいろな細菌がいます。ところがアレルギーやストレス、過労、それに普通の感冒のウイルス感染などで扁桃の免疫能が一時的に低下すると、外からの細菌や常在の細菌の感染力が上回ることによって、扁桃炎が始まるのです。小児期では一過性の免疫能の低下により、炎症を繰り返す習慣性扁桃炎になったり、成人では反対に免疫能の異常な上昇により扁桃病巣感染症を引き起こすことになるのです。