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MPS (Multipurpose Solution、マルチ・パーパス・ソリューション)

 ソフトコンタクトレンズの消毒方法には、煮沸消毒と薬剤を使った化学消毒がありますが、前者は頻回交換レンズの普及により現在ではほとんど行われなくなっています。化学消毒には、MPS、過酸化水素、ポピドンヨードを用いた方法があり、MPSの利用者が最も多いと言われています。

 2009年12月国民生活センターは、コンタクトレンズ眼障害の中でも難治性のアカントアメーバ角膜炎に対する各種消毒剤の比較試験の結果を公表し、大きな話題となりました。(詳しくは、こちらを参照のこと。)この中で、MPS8銘柄のうち6銘柄でアカントアメーバに対する効果が低いとの報告があり、MPS使用者に大きな不安を与えることとなりました。

 しかしながら、アカントアメーバ角膜炎をはじめとしたコンタクトレンズ眼障害の最大の原因はレンズやケア用品の扱いにあります。MPSでも、レンズを外したときのこすり洗いや、レンズケースの洗浄・乾燥など清潔を保つための正しい使い方を励行していれば、眼障害の危険性はかなり低くなります。ただし、MPSに含まれる防腐剤、界面活性剤、湿潤剤などが眼表面に繰り返し触れることで起こるアレルギー反応や過敏症もありますので、正しく洗浄・消毒をしているにもかかわらず充血やめやになどの症状がでるような場合は、他の消毒剤や消毒のいらない毎日交換型レンズへの変更も考えなければなりません。このようなときは、自己判断で変更せず眼科専門医の診断・判断のもとで指示をもらいましょう。

 最近のMPSは「こすり洗い不要」を売り文句にしているものもありますが、これは眼科医から見ると不適切と言わざるを得ません。製品にかかわらず、正しいMPSの使い方は以下の通りです。

1. 石けんと流水で手指を洗う。
2. レンズを外して、MPSでこすり洗い。こすり洗いは表裏それぞれ20回ずつ行い、その後MPSですすぐ。
3. ケースにMPSを注ぎ、レンズを浸す。このとき、レンズ全体が液の中につかるようにする。
4. 少なくとも定められた時間、MPSの中で保存。(これが消毒になります。)
5. レンズをつける前に、MPSですすぐ。
6. ケースは水道水で洗い、清潔な場所で乾燥させる。

 以上、正しいケアで眼障害を防ぎましょう。

 なお、アカントアメーバの他、細菌に対する消毒効果は、MPSよりも過酸化水素の方が強いことを付記しておきます。

(最終更新日 2010/10/1)