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角膜移植

 角膜はいわゆる黒目の表面を被っている透明な膜です。ここを通過した光が、後方にある水晶体や硝子体を経て眼球の内側(うちがわ)にある網膜に到達し、その刺激を神経が脳へ伝えてものが見える、という仕組みになっています。

 この角膜が病気やけがで濁ってしまったり、表面がいびつになってしまったりすると、後方に十分な光が到達できずに視力が低下します。薬やコンタクト・レンズである程度視力を改善させることが可能な場合もありますが、程度がひどく日常生活に支障を来すくらいに視力が障害された場合には、角膜をきれいなものと交換する、すなわち角膜移植を行うことになります。

 角膜移植の対象になる主な病気には、円錐(えんすい)角膜、角膜変性症、水疱性角膜症、重症のドライアイなどがあります。あくまで角膜に問題があって視力が低下した場合に限られます。水晶体、網膜、神経に異常があれば、対象になりません。

 臓器移植法の成立により脳死移植が話題になることが多くなりましたが、角膜は心臓死後でも摘出可能であり、専用の保存液を使用したり、冷凍したりすることで摘出後ある程度の時間が経過しても手術に利用できるため、以前から多くの手術が行われてきました。

 現在でも多くの方が角膜移植を受けるために手術を行う施設で順番を待っています。一部の施設では外国から冷凍角膜を空輸して手術を行っていますが、それにしても亡くなられた方が角膜を提供されない限り移植を行うことはできません。近い将来、人工角膜が開発されることも決して夢ではありませんが、現時点では亡くなられた方やそのご遺族の善意に支えられている治療法と言えます。脳死移植が論議される中で臓器提供に対して積極的な方が多くなってきているように思われます。ひとりでも多くの方がアイバンクに登録され、角膜の提供者になられることを願っています。