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先天性色覚異常

 眼球の最も内側にある網膜には視細胞という光を感じる細胞があります。視細胞は、光の強さすなわち明暗を感じる桿体<かんたい>と、色を感じる錐体<すいたい>とに分けられます。先天性色覚異常はこの錐体の機能が障害されて起こります。錐体は3種類あり、どの種類の錐体が障害されるかでどの色が見づらくなるかが決まります。

 先天性色覚異常のほとんどは第一異常、第二異常と分類されるもので、赤や緑の色合いが見分けにくくなります。X染色体劣性遺伝という形式の遺伝をするので、女性よりも男性に多いのが特徴です。その他に第三異常といって青色が見分けにくくなる色覚異常や、すべての種類の錐体が欠損している全色盲もありますが、これらは極めて稀です。

 先天性色覚異常は進行することはありませんが、治療法もありません。社会的には進学や就職の際に制限を受けることがあるので、将来の進路を選択する年齢になる前に、異常の有無を正確に把握しておくことが大切です。

 平成14年度までは小学校4年生の時に学校健診の一部として色覚検査が行われていましたが、平成15年度からは学校保健法の改定により学校での色覚検査は必ずしも行わなくてもよい項目になりました。学校での健診という形での検査はプライバシーや差別の問題から敬遠される場合もあり、色覚検査に対する学校の対応はまちまちのようです。したがって、平成15年度の時点で小学校4年生以下の児童では保護者が申し出ない限り色覚検査を受ける機会がないので、色覚異常であっても見つからない可能性があります。

 最近では色覚異常があることだけで入学を拒否される学校はほとんどなくなりましたが、一部の色を扱う職種や交通機関の運転士などでは就業の制限を受けることがあります。したがって、将来の進路を決める時期、遅くとも中学校卒業の頃までには色覚異常の有無をはっきりとさせておくべきです。血縁者に色覚異常の人がいる場合はもちろんですが、そうでない場合でも異常が出現することもあるので、一度は検査を受けておいた方がよいと思われます。現状では学校での検査が必ずしも受けられるとは限らないので、気になるようであれば直接、眼科医の診察を受けられた方が的確な診断やアドバイスが受けられるでしょう。

 

(最終更新日:2010/01/28)