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洗眼の功罪

 かつてトラコーマに代表される感染力の強い病気が多かった時代には、眼を洗うことは感染を防ぐ意味でたいへん重要でした。眼科での治療も、眼を洗ってから目薬をつけ眼軟膏を塗る、ということが一般的に行われていました。

 しかし、現在では衛生環境がよくなり感染力の強い病気にかかる機会は激減しています。それとともに眼を洗うことの必要性も少なくなってきました。今でも、眼に異物が入ったり薬品が入ったりしたときや、花粉の飛散時期に花粉症の人が外出から帰ってきたときなどに眼を洗うことは、眼の障害を防いだり症状を軽くする意味で必要かつ有効な手段です。でも、そのような時を除くと、涙で多くの異物は洗い流され眼の表面は保護されていますので、洗眼の必要はありません。眼の表面にある涙は、粘液の層、水分の層、油の層の3層構造をしています。外部から異物や細菌が入ってきたときには、主に粘液の層でこれらを捕まえて眼の外へ出そうとしてくれます。眼を洗うことで、この粘液まで洗い流してしまうと眼の表面を保護してくれるものがなくなってしまうので、眼を洗うことが逆に眼を傷つけることになりかねません。

 最近、コンタクト・レンズ使用者を主な対象に眼を洗うための薬液、洗眼剤が発売されていますが、洗眼剤の使いすぎで実際に眼の表面をきずつけてしまっている例も報告されています。確かにコンタクト・レンズを使用していると、その刺激で眼の表面の分泌物が増えることがあり、そのためにレンズのつけ心地が悪くなることも稀ではありません。そのようなときに眼を洗いたくなるのはわかりますが、レンズ自体が汚れているためにつけ心地が悪い場合もあります。また、眼自体に病気があってつけ心地を悪くしている場合もあります。レンズ・ケアや定期検査を怠って、眼だけを洗っていても意味がありません。洗眼剤の使用は1回10秒、1日2回までにしておいた方がよいと言われています。くれぐれも洗いすぎないように注意しましょう。そして、洗っても眼の具合が悪いときには必ず眼科医に診てもらうようにしましょう。

 

(最終更新日:2010/01/28)