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糖尿病と眼

 内科で糖尿病と診断を受けると、眼科も受診するように言われます。なぜでしょうか?

 糖尿病で血糖値が高い状態が続くと血管に多くの負担がかかり、血液の流れが悪くなってきます。特に細かな血管の多い臓器ではその影響が出やすくなります。その代表が腎臓、神経、そして眼です。

 眼の内側には光を感じる細胞のある網膜があります。この網膜が細かな血管の多い場所で、糖尿病の状態が悪いと血管から血液の成分が漏れ出て眼底出血を起こしたり、それにともなった炎症が起こったりします。さらに進行すると網膜剥離が生じることもあります。このような状態を糖尿病網膜症といい、わが国では緑内障に次いで失明原因の第2位となっています。

 ただし、糖尿病になったからといって、すぐに網膜症が起こるわけではありません。糖尿病の悪い状態が長く続くと、網膜症が発症し少しずつ進行していきます。したがって、一番の対策は糖尿病の早期発見と適切な管理です。会社などで定期的に健診を受けている方は糖尿病が早期に見つかりやすいのですが、健診を受ける機会のない方は自治体の健診などを積極的に活用して早期発見に努めましょう。

 また、健診で糖尿病を疑われているにもかかわらず、精密検査をせずに何年も放置する人がいますが、それでは健診を受けている意味がありません。糖尿病を疑われたらまず内科で精密検査を受け、適切な診断を受けましょう。残念ながら糖尿病は治すことはできません。でも、きちんと管理すれば普通に日常生活を送ることができます。

 網膜症は初期の段階では、糖尿病の状態が改善することで改善します。しかし、網膜症がある程度進行してしまうと、糖尿病の状態が改善しても、網膜症が悪化してしまうことがあります。その場合にはレーザー光線を使った治療(光凝固)や手術も行われますが、これらの治療は悪化を止めるのが目的で、失われた視機能を元に戻すことは困難です。したがって、網膜症に関しても定期的に眼科で眼底検査をはじめとする検査を受け、早期発見に努めることが重要です。

 

写真1:単純糖尿病網膜症 

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点状の出血と白斑(白い点)が認められる。この程度では視力に影響はなく、自覚症状はない。眼底検査をしないかぎり、網膜症を見つけることはできない。

 

写真2:硝子体出血

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すでに光凝固も行われているが、出血を起こしている。視力も不良であり、手術をすべき状態と考えられる。

 

写真3:増殖糖尿病網膜症

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出血や炎症を繰り返した結果、増殖物(白い塊状のもの)ができている。視力は極めて不良で、手術をしても大きな視力の改善は期待できない。しかし、放置すればさらに悪化し、失明に至る可能性が大きい。このようになる前に何らかの治療をすべきである。

 

(最終更新:2020.9.29/田辺由紀夫)