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近視 遠視 乱視

ものが見える仕組み

 ヒトの目は眼球の中に入って来る光の刺激を、眼球の最も内側にある網膜にある視細胞で感じ取ります。視細胞で感じ取った刺激が視神経を伝わり脳の中の視覚中枢へ伝えられて、「見える」と感じます。

 ものがはっきり見えるためには、眼球に入ってきた光が網膜で焦点を結ぶことが必要です。そのため水晶体というレンズの役目をしている部分の厚みを変えることによってピント合わせをしています(図1)。

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図1:角膜・水晶体・網膜・視神経を経てものが見える

 

近視

 近視の眼では網膜よりも前で焦点を結んでしまう(図2)ために、ぼやけて見えてしまいます。この場合、遠くのものほどぼやけて見えるはずです。しかし、メガネやコンタクトレンズで焦点の位置を後ろへズラしてあげれば、はっきり見ることができます。

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図2:近視では網膜より前に焦点が結ばれる

 近視の原因は現在のところ明らかにされてはいませんが、一般に体の成長に伴う変化として、眼球は近視化すると考えられています。身長が急激に伸びる小学校高学年から中学生にかけて、近視になる人が多いことからもこのことは理解できるでしょう。近くのものを続けてみること(近業)が近視の原因であるとする説が、わが国ではかつて強く支持されていました。そのため、未だにテレビやテレビ・ゲームを原因とするような考えを持っている方が少なくありません。しかし、近業原因説は科学的に証明されたものではなく、様々な環境因子や遺伝的な素因が影響し合って近視になるという考え方が一般的です。

 まだ、仮設のレベルですが屋外活動との関係が特に注目されています。屋外環境光(可視光線のうち、波長360400nmの紫光)に近視抑制効果があると推測されます。近業を多くしても一定時間の屋外活動をしていると近視になりにくいというのです。

 近視の治療としては、オルソケラトロジー(夜間=就寝中にハード・コンタクトレンズを装用し眼表面の形を変える方法)やレーシックがあります。これらは近視進行抑制効果もあるとの報告もあります。また、点眼や特殊な眼鏡、コンタクトレンズによる抑制効果も考えられています。ただし、これらはいずれも保険適応ではありませんので、説明を受けた上で経済的な負担を考慮し、施行するかどうかを検討すべきでしょう。

 一般的には、見えにくくて不便を感じるようであれば、メガネやコンタクトレンズではっきりと見えるようにするのが唯一の方法です。矯正の方法は年令、近視の度数、生活環境などによって異なってきますので、必ず眼科医と相談の上、適正なメガネ、コンタクト・レンズを作るようにしてください。

 

遠視

 遠視の眼では網膜よりも後ろで焦点を結んでしまう(図3)ために、ぼやけて見えてしまいます。この場合、近くのものほどぼやけて見えるはずです。しかし、メガネやコンタクトレンズで焦点の位置を前へズラしてあげれば、はっきり見ることができます。

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図3:遠視では網膜よりも後方で焦点が結ばれる

 遠視ではものを見るときに、常に目でピント合わせをしなければならないので疲れやすい傾向があります。遠視の程度が軽い場合には、無意識にピント合わせをしているので、見えにくいと感じない場合もあります。しかし、目のピント合わせの力は年令とともに弱くなってくるので、40歳頃になると見えにくさを自覚するようになります。遠視の程度が強ければ、若くても見えにくさや疲れを感じます。そしてそれは近くを見たときに強く自覚します。また、幼児では遠視の程度によっては斜視や弱視の原因になるので、注意が必要です。

 原則として遠視の場合には、常にメガネ、コンタクトレンズを使うことになりますが、遠視の程度や生活環境によっては若干使い方が変わってくることもあります。メガネ、コンタクトレンズを作るときには、必ず眼科医と相談するようにしましょう。

 

乱視

 乱視の眼では網膜にうまく焦点を結べないために、ぼやけて見えてしまいます。しかし、メガネやコンタクトレンズで焦点を合わせれば、はっきり見ることができます。

 乱視の原因は主に黒目の表面にある角膜という部分が、ラグビー・ボールの側面のようにきれいな球面をしていないことにあります。そのために、角膜を通過した光線が一点で焦点を結ばずにぼやけて見えてしまうのです。また、眼の中でピント合わせをするレンズの役割を果たしている水晶体が原因で生じる乱視もあります。角膜の乱視を矯正しても乱視が残る場合があり、これが水晶体による乱視で残余乱視とも言われます。こちらも、眼球内に入ってきた光線が一点で焦点を結ばずにぼやけて見えてしまうのは同じです。

 見えにくくて不便を感じるようであれば、メガネやコンタクトレンズではっきりと見えるようにするのが一般的です。乱視の程度やお仕事、生活環境等によって使い方が変わってくることもあります。メガネ、コンタクトレンズを作るときには、必ず眼科医と相談しましょう。

(最終更新:2021.6.17/田辺由紀夫)