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心療歯科

 現在の社会・経済状況は人々に大きなストレスを与えています。その結果、軽症うつ病をはじめとする精神疾患の発症率が高くなり、都市部を中心に自殺が増えているようです。個人、集団を問わずメンタルヘルスの維持は経済活動にも影響する重要課題となっています。

 歯科医療においても社会的、個人的ストレスや心の悩みから、歯や口や顎の病状を訴える人が増えています。また、悪い歯並びや口臭を気にするあまり対人関係が結べず、引きこもりになったり、歯科治療に対する恐怖心から必要な治療が受けられないといった人も多くなっています。そこで、患者さんの心のケアをしながら歯の治療を進める「口腔心療科」や「心療歯科」が注目されています。

 心理的因子が関係することが多い歯科の主要な症状には顎の関節にまつわる症状、舌の不快感や味覚障害などの症状、自臭症と呼ばれる思い込みによる口臭に関するもの、器質的な変化が無いのに治療後も痛みが続いたり、歯の無い所に歯の痛みを感じたりする原因不明の歯の痛み、歯科治療や歯科医そのものに対する恐怖症など多岐に渡ります。

 心療歯科に特徴的な治療は心療歯科に辿りつくまでの経過や状況を含め、患者さんの訴えを十分に聞くことです。痛みの原因を探ると共に患者さんの悩み、生活環境やその変化などのストレス因子を注意深く聞き出すと共に心理テストや性格分析などの心理学的手法を用いて、その患者さん固有の問題点を検討します。自律訓練法、行動療法、交流分析などの心理療法やカウンセリングを行い、必要に応じて抗うつ薬や抗不安薬などを併用して症状の改善を試みこともあります。

 統合失調症、うつ病、神経症などの精神病理のある場合は、精神科の担当医に協力を要請します。心療歯科の重要性が認められ、需要が明らかとなったのは最近のことで、診療科目として掲示することは認められていません。また、診断や治療ができる歯科医師も少ないのが現状です。また、訴えのある症状に対し、一般的な歯科治療が十分に尽くされていることが重要で、安易にストレスなどの心理的なものに原因を求めると重大な見落としをすることがあり、注意が必要です。