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認知症と運転免許

 このところ高齢者や認知症の方の運転にまつわるニュースを目にすることも多くなりました。高齢になると、動体視力が低下する、複数の情報を同時に処理することが苦手になる、瞬時に判断する力が低下するなどの変化がみられ、ハンドルやブレーキ操作が遅れやすくなります。また認知機能が低下して認知症になる人の割合も増えます。こうしたことから2017年に道路交通法が改正され、高齢運転者への対策が進められました。今回はこの内容も含めて、高齢者と認知症の方の免許について解説いたします。

 

(1) 免許更新時

 運転免許更新時に70歳以上の方は高齢者講習を受けなければなりません。この講習は、視力や運転操作に問題がないかを確認したり実際に車を運転したりしながら、自身の運転技能についての認識を深め、その後の安全運転に生かすためのものです。

 運転免許更新時に75歳以上の方は、さらに認知機能検査を受けなければなりません。この検査は、検査員の説明を受けながら検査用紙に記入する形で行われ、結果はその日に書面で通知されます。この検査で認知症のおそれがあると判定された場合には、臨時適性検査の受検もしくは医師の診断書の提出を求められ、その結果によっては免許を更新することができません。

 

(2) 交通違反を犯した場合

 75歳以上の運転者が信号無視などの一定の違反行為を行った場合には、免許更新時と同じように、臨時の認知機能検査を受けなければなりません。検査の結果、認知症のおそれがあると判断された場合には、やはり臨時適性検査の受検もしくは医師の診断書の提出が必要となります。その結果、運転に影響を及ぼすような認知症であると判断された場合には、免許の取消し処分となります。

 (1)や(2)で診断書が必要となった場合には、まずはかかりつけの医師にご相談ください。

 

(3) 医師による任意の届出制度

 医師は、認知症の患者が自動車運転をしていることがわかった場合には、都道府県の公安委員会に届け出ることができます。この届け出は医師の任意で行われるもので、届け出の前に患者や家族に運転免許の返納を促し、届け出については本人や家族の同意を得るよう努めることとなっています。家族や介護者が、認知症の方の運転を止めさせられずに困っている場合には、この制度の利用も含めて医師に相談していただくのも一つの方法です。

 

(4) 免許の自主返納

 運転免許の自主返納とは、有効期限の残っている運転免許を返納することです。1988年に高齢ドライバーの事故の多発を受けて導入されましたが、年齢を問わず返納することは可能です。2002年には「免許証を返納すると身分証明書が手元に無くなる」という意見を反映して返納後でも身分証明書として使える運転経歴証明書が導入されました。多くの自治体では自主返納を推進するために、運転経歴証明書を持っている人に対してバス・タクシーの割引などの優遇措置を行っていて、そのほかにも民間主催のさまざまな特典があります。

 

 制度や手続きの詳細につきましては、運転免許センターや警察署のホームページでご確認いただくか、直接お問い合わせください。また、運転中のミスや事故が増えるなど身体機能の低下や認知機能の低下が心配な場合には、かかりつけの医療機関でご相談ください。

 

(最終更新:2019.2.25/都甲崇)