スマートフォン版へ

医療費の窓口負担解消を目指す ゼロの会

医療費の窓口負担「ゼロの会」
お金の心配なく、安心して医療を受けられる社会へ

2007年発足~2024年4月1日現在

27417

10305

  1. 医療費の窓口負担「ゼロの会」
  2. 活動ニュース
  3. 医療費の窓口負担をゼロへ~めざせヨーロッパの常識~ ゼロの会が「市民シンポ」を開催
いいね!窓口負担をゼロ。

活動ニュース

医療費の窓口負担をゼロへ~めざせヨーロッパの常識~ ゼロの会が「市民シンポ」を開催

 

 2007年11月10日、医療費の窓口負担『ゼロの会』は神奈川県総合医療会館ホールで市民シンポジウム「医療費の窓口負担をゼロへ~めざせヨーロッパの常識~」を開催しました。シンポジウムでは、窓口負担解消の正当性や社会的意義について討論。当日は横浜や東京、千葉、埼玉から90名の市民、医療関係者が参加しました。

 パネラーは『ゼロの会』著名人賛同者のジャーナリスト・むのたけじ氏、共同通信論説委員・髙瀬髙明氏、池川クリニック院長・池川明氏の3名。司会は神奈川県保険医協会理事の桑島政臣氏が務めました。

 ここでは当日のパネリスト3名の発言要旨とディスカッションの模様を簡単に紹介します。

 

「患者・医師と『ゼロ』目指す」  池川クリニック院長  池川 明氏

 

「実態の周知で医療費増へ」  共同通信論説委員  髙瀬 髙明氏

 

「『命は皆で守る』が原点」  賛同者・ジャーナリスト むのたけじ氏

 

ディスカッションより

 


 

 

「患者・医師と『ゼロ』目指す」  池川クリニック院長  池川 明氏

 

  神奈川県保険医協会の副理事長、医療運動部会長を務めている。医療運動部会というのは、医療制度を良くしていこうということを考えているグループだ。

 医療費の抑制が始まったのは土光臨調の頃だと言われている。小泉内閣に入って一気に制度が変革、医師らもモチベーションを落としてきている。このままでは日本の医療に禍根を残すと考え、どうしたら医療者のモチベーションを上げつつ、医療制度が良くなるか、という中で、「窓口負担ゼロ」という運動に取り組むことになった。

 OECD諸国におけるGDPあたり医療費の国際比較では、04年時点で経済大国日本は21位だった。でも、健康達成度はWHOで1位と評価されている。クオリティーは米国に劣るし、病室も綺麗ではないという話もあるが、日本の医療は世界に比べ安く効率的というのはご存知の通りだ。

 しかし今、世界中から見ても安い医療費をさらに切り詰めようとしている。よく言われる「医療費の無駄」は何だと思いますか、と年配の方に聞くと、同年代の高齢者による病院のサロン化などを挙げる方もいる。年寄りは金を持っているから負担できる、と言い切る方も多い。負担できる方はいいのだが、負担できない方も多い。

 医療費に関する運動を行っている中で分かるのは、元気な国民は医療費に関心を持たないということ。病気になって初めて関心を持つ。お年寄りはというと、自分の病気を治すのに精一杯で医療制度には目が届かない。医療者は毎日忙しく、制度に不満を持ちつつも、変えようという動きがでてこない。患者も医療者も、結局政府の決めるままを受け入れてしまっている。

  

懐具合を気にせず誰もがいい医療を

 日本は、一般会計のうち社会保障関連費は大体4分の1。ところが米国は、あれだけ費用を割いている国防費よりもさらに多くの金額を社会保障につぎ込んでいる。イギリスも半分を占める(『社会保障円グラフ』 JPEG形式56MB)。それでもまだ、日本では社会保障費が多いといわれていて、民間保険を入れるという話もある。どうも医療や年金が、“ある人々”には金のなる木に見えているようだ。

 民間保険と、社会保障としての公的保険は一見同じに見えるが、公的保険は皆で支え合うのが基本だ。お金のある人、ない人ともに、いざというとき困るのだから平等な医療を受けましょうというのが社会保障の医療。これに対し民間保険は利益を追求しなければならない。加入者や株主に配当を出さなければならないから、効率の悪い患者は切り捨てられる。果たしてそれでよいのだろうか。やはり、病める人はお金の有無にかかわらず医療を受けられるべきだというのが保険医協会の考え方だ。

 その中で、今は医療費を増やさないと、安全も保てないほどギリギリの所まで切り詰められているが、医療費総枠を増やすと、患者さんの窓口負担が増える。1割負担でも増える。どうしたらよいかと考えた時、国民は既に税金、保険料を払っている上に窓口負担があり、負担が多過ぎるのではないか。ならば窓口負担をなくせば、我々も患者さんもいい医療を求められるのでは、と考えた。

 そこで、アピール文を作ったところ、多くの著名人から賛同をもらった。これまで運動をやってきて、これはかつてないことだった。多くの国民はやはり窓口負担が重いと考えており、解消するような努力をした方がいいと考えた。

 でも医師だけが「負担ゼロにしよう」と言ってもうまくいかない。腎透析の患者団体の方たちとお話した時、患者団体だけでもうまくいかない、やはり医療者とともに活動していかなければならないのではないかと伺った。「お金の有無にかかわらず誰もがいい医療が受けられる」ことを基本におけば、患者さんと医療者の間に連帯感が生まれるのではないかと言う気がしていて、この運動をやっていきたいと考えている。

 

▲ページトップへ

 

 

「実態の周知で医療費増へ」  共同通信論説委員 髙瀬 髙明氏

  現在、主に医療、年金、介護の制度を中心に取材をしている。「窓口負担ゼロ」は、日本の常識では驚きという感じだが、世界では、窓口負担がゼロの国もたくさんある。

 日本の社会保障費は、ヨーロッパに比べ3分の2くらい、福祉政策が進んでいる北欧に比べると半分くらいだ。日本の高齢化はかなり進んでおり、お年寄りが増えれば医療費も当然増えるが、日本の国民医療費の総額は、あまり伸びていないように感じる。

 政府が一番問題にしているのは、国民医療費の対前年度伸び率。要するに国民所得の伸びを医療費の伸びが上回っており、これが将来的に経済の活力を殺いでいくのではないかということ。そこで政府の経済財政諮問会議が中心となり、昨年の「骨太の方針」で今後5年間で社会保障費1.1兆円の削減を決めた。毎年2200億円の削減で、突きつけられた厚労省も困って色々やりくりしている。

 川崎・元厚労相は、大臣を辞めてから出した著書の中で、「これ以上社会保障を削るのは無理だ」と言っている。舛添大臣も同じことを述べているが、政府全体の中でどうなっていくかということだと思う。

 政府は「将来、医療費がこんなに大きくなるから大変だ」ということを、医療費を削るために言い続けてきた。94年の段階では、2025年の医療費は141兆円だと言っていた。ところが試算の度に下がり、直近では65兆円と半分以下になってしまった。推計は医療費削減に利用している感じがするだけで、根拠がない。これに対しては保険医協会も将来推計はそんなに高くないという試算を出している。国会でもかなり問題になり、検討会が作られ、「推計しても無駄だ」という最終報告が先日出された。

 

後期高齢者医療制度の狙いとは

 国民医療費の中で現在最もウエイトを占めているのは75歳以上の方たちの医療費だ。高齢者の医療費は、若者に比べて金額的に大体5倍かかると言われている。歳をとると病気になるのだから当たり前だ。

 しかし厚労省は、高齢者の医療費が多いということで、この75歳以上の方たちを対象に来年4月から新しい後期高齢者医療制度を始める。現在の職域別の保険と違い、75歳以上という年齢を基準に、個々で保険に入ることになる。対象は約1300万人。狙いは、今、被扶養者で保険料を払っていない人が200万人いるが、この方たちからも徴収するということが一つだ。

 もう一つ。後期高齢者医療制度の財源構成は、患者負担を除くと公費が5割、保険料が1割、あとは保険組合からの支援金4割で成り立っている。これは、介護保険の形と同じだ。この形でやると、全体が膨れると公費も増える。国が公費を増やさないようインセンティブを働かせると、全体も当然縮小される。後期高齢者の医療費が伸びにくい形になっているわけだ。伸びそうになったら診療報酬の調整とか、定額制とか、いろいろ出てくると思う。とても心配な制度だ。

 

医療費を増やすには

 最後に言いたいのは、医療費を増やすにはどうしたらいいかということ。医療費は、公費と保険料と窓口負担の3つで成り立っており、公費も税金で、保険料も窓口負担も基本的には全部私達が払っている(『医療費の内訳』 PDF形式24MB)。公費は、財務省が大きな代弁者であり、絶対増やしたくないと言う。保険料は国保を除くと企業主も負担しているため、財界がバックにいる。だから増やすのは難しい。すると患者負担にしわ寄せがいく。声を挙げる人がいないからだ。

 我々が声を挙げていくにはどうしたらいいのか。それには選挙ということになるが、実態をみなさんに知っていただくことが大事だと思う。先の参院選挙で、自民党に対して「NO」と示す形になったが、今回「来年4月からの高齢者の負担増凍結」が突然出てきた。この施策にはまやかし的な部分もあるが、非常に大きいことだ。

 政治家は選挙のことを考える。次の衆院選挙でどうするか、と考えると負担増の話は出にくい。そこは政治家の方々も敏感なので、「ゼロの会」のような日々の色々な活動を通し、実態をみなさんに分かっていただくこと。それが将来的には選挙という形で繋がっていくのではないかと思う。

 

▲ページトップへ

 

 

「『命は皆で守る』が原点」   賛同者・ジャーナリスト むのたけじ氏

  1915年に生まれ、36年に新聞記者に。翌年が中国への全面侵略となる盧溝橋事件だった。新聞記者として、10年間国内の姿を見て、中国東南アジアの戦場にも出かけた。その結果、現在の人類状況の中で戦争はあらゆる罪悪の根っこだ、これをこのまま放っておいて文化だの福祉だのと言ってもどうにもならないという認識を深めた。

 物心ついたときから、人類の大きな敵は、病気と貧困と戦争の3つだと言われてきた。このごろはこういうことを言われることも少なくなった。

 裏返せば、人類が戦争をやるためにつぎ込んでいる有形無形のエネルギーをすっぱり無くせば、貧困や病による悲劇や嘆きをなくすため、社会としてやらなければならない仕事の99%は一日で実行できるはずだ。戦争を許しながら他の文化国家や福祉国家などと言ってみたってそれが日本の姿ではないか。

 そういう意味で私は保険医協会に「道しるべでは平和・文化・福祉が一体だ。社会福祉をこわせば、文化は枯れて戦乱に沈む。正しい道にもどろう」とメッセージを送った。それを印刷したリーフレットを配り、秋田県保険医協会でむのさんを呼ぼうということになり、少し波紋が広がって今日ここに座っている。

  

負担ゼロは社会保障の原則に合致

 患者の負担する医療費がゼロということは、医療関係に必要な全ての有形無形の負担は社会全体で負担するという、まさに60数年前に理想として出された社会保障、福祉の原則に合致する。協会のリーフによれば、ヨーロッパの名の通った国々では常識だ。

 医療費と教育費が完全に無料な国はキューバだ。幼稚園から大学院まで、勉強したい者は一文も負担せずに学べる。病気になったら金銭の心配なしに最高の医療が受けられる。しかし、資本主義の欧州で「負担ゼロ」というのはただ事ではない。命を守る、健康を守るということは、人間にとって個人の問題ではない。人類の生命そのものを守るためだという認識があるからだ。それが「ゼロの会」に賛同した理由の一つだ。

 72年間ジャーナリストをやってきて、日本人は物事の本質、一番大事な問題をぎゅっとつかまえてそこと取り組むという姿勢がなく、当座を切り抜けるようなことだけに頭を使うのが上手くなってしまった。新聞、放送の毎日のニュースで一番大事なのは、何故それが起こったか、結果はどういうことか、ということだ。しかし今こんな問題が起こっているということばかりが報じられる。ニュースではなくトピックスだけだ。それを我々が受けているから、頭の腑抜けな人間になってしまった。もう一度根本から考え直さなければいけないと思う。

 

現状を根底から考えなければ先はない

 人類の始まりは700万年前まで遡る。ところが我々が問題にするのは1万年前、イラクの某所で農耕が始まった頃だ。食物が余り出したら権力が生まれ、国家ができ、6千年位前から戦争をやりだした。しかし、24時間を700万年の人類の歴史に当てはめると、国家が生まれ、戦争を始めたのは23時57分からだ。つい先だってのこと。699万年間、人類は食物を自分で作れず苦しみながら生きていた。200万年前の人類の数は12万5千人と推定される。1万年前は1千万人。現在は今年2月の国連の推計で67億人。

 農業を始めてからは単純に1年に67万人ずつ増え、人口は67億になった。その前の699万年間には1年かかって5人しか増えなかった計算になる。

 いかに自然の恵みで安心なものを食べるかに夢中だっただけでなく、肉食動物がうじゃうじゃいた。いかに食われないか、699万年間人類は悪戦苦闘してきた。それが我々の遺伝子にはある。戦好きではないのだ。心優しく、生きる道を求めてともに学び合い、命を守る、健康を守るということは、現在のような行政と医療団体が相談して決めるような薄っぺらなものでなく、社会活動の土台そのものだった。それを薄っぺらに考えてきたからこのようなザマになった。

 我々はもう一度、命をみんなで守るんだ、という原点、人類の歴史そのものをみんなで勉強し直しながら、現在の日本の社会状態がこれでいいのか、根底から考えなければ先はない。

 

▲ページトップへ

 

 

ディスカッションより

(池川氏)

 医療費は殆んどが私達が支払うお金で成り立っている。その使い道を要望するのは当然のこと。患者や先生方に「ゼロの会」のことを話すと、財源はどうするのかと聞かれるが、その発想自体おかしいのでは。要望だけでいい。そこが欧米との違いだと思う。

 08年4月から「メタボ健診」(特定健診)が始まるが、フランスでは特定健診をやると言うと、太ろうが太るまいが個人の問題で、国に管理されることではないとして政府がひっくり返るそうだ。思考停止で色々なことが決まっていくのが一番怖いこと。これが「ゼロの会」の隠れた一面でもある。

 

(むの氏)

 素人ながら考えることの一つは、色々な悲劇や苦しみは、人間は身近なところで助け合ってしのいできた。例えばフィリピンでは、行政が保険制度を作らなくとも地域、家族が支えているから介護保険はないそうだ。日本では、家族や地域関係が壊れ、たやすく人の命が奪われている。

 医療と教育が人類の二本柱で、命を守る根底のものだ。これをもう一度考え、そのために金をどうやって使うのか、国民全体で考えるべき。今、日本はぎりぎりのところにいる。「ゼロの会」は「タダがいい」という簡単なものではない。

 

(参加者)

 趣旨に賛成だ。厚労省は「持続可能にするため改革を」と言っているが、諸政策が今日の医療崩壊を招いていると思う。病院はどんどん閉鎖され、縮小している。改革について意見を聞きたい。

 

(池川氏)

 厚労省は予算の枠内でやらざるを得ない。とにかく問題は財務省だ。多分、相手は厚労省ではない。

 

(髙瀬氏)

 先生に同意だ。小泉首相以降、国家予算の作り方が変わった。厚労省には医療がどうあるべきか考えている人は多いが、圧力がかからないと動かない。国民が圧力をかけるべき。

 

(参加者)

 「ゼロの会」のチラシをもらい今回参加した。今日、はっきりした運動の方向が見えると思って参加したのだが…。

 もっと運動の体制作りを考えていく必要がある。神奈川だけでなく全国へ、消費者も含め運動していくのが望ましいのではないか。

 

(池川氏)

 方向性を大きく打ち上げたいが、実は医療界で反対が多い。患者のモラルハザードを理由にする医師もおり、開業医になかなか広まらず歯がゆい。逆に、患者さんから先生にパンフレットを持っていってほしい。

 目標は署名を1千万集めること。何年もかけやっていきたい。川崎の乳幼児医療費無料化のように、訴え続ければ変わる可能性は十分ある。お力を借りたい。

 

(参加者)

 リーフレットに書かれている「かつて日本でもゼロだった」との記述に、「そうだった」と食いついた。少し前まで実現していたことを皆忘れている。これを大きくキャッチフレーズにしてチラシなど作ってはどうか?

 

(平尾・神奈川県保険医協会理事長)

 カナダに行った際、医療費がタダだと言われ、愕然とした。フランスは、慢性疾患の窓口負担はゼロだ。風邪などは償還払いされている。

 国際競争力は北欧がトップ。社会保障に金をつぎ込んでも国力は落ちない。欧州の保険料負担率は7対3。日本は5対5だ。この企業の「5」の部分を今消費税でまかなおうとしている。我々の主張がなかなか理解されないのは歯がゆいが、頑張っていきたい。

 

(賛同著名人・千葉茂樹氏)

 このゼロの会を政治に反映させていきたい。どの政党なら実現できるのか。

 

(池川氏)

 まだ色をつけたくないため、政党には働きかけていない。今後、与野党含め、働きかけていく。

 

(神奈川県保険医新聞 2007年12月5日号より)

 

▲ページトップへ

ゼロの会トップページへ

ページトップへ

私たちも「ゼロの会」に賛同しています。

賛同署名はこちら サポーター募集中!!

「ゼロの会」に賛同する

実現には、国民多くの支持が不可欠。ゼロの会では、広く市民から賛成を募ることで、マスコミや関係団体、そして世論へと働きかけます。

携帯からも賛同の受付ができます

ゼロの会に協力したい!!

ゼロの会では、PR用リーフレットの配布や、メールやWEBを活用した賛同呼びかけをお願いしています!

シンポジウム
まちかど健康相談など

リーフレットのご紹介

リーフレットは「ゼロ円」でお送りいたします。

リーフレットの送付を希望される方はこちら

映像コンテンツ

映像コンテンツをご紹介します。

リンク

医療費の窓口負担「ゼロの会」  事務局:神奈川県保険医協会

横浜市神奈川区鶴屋町2-23-2 TSプラザビルディング2階   TEL:045-313-2111   FAX:045-313-2113

Copyright © 2013 hokeni kyoukai. All rights reserved.